筆者ら医師は外来診察の場で、「認知症にならないよう、どうすればいいですか」と尋ねられることがよくあります。そして、「運動をしましょう」「血圧や血糖を管理しましょう」「禁煙しましょう」と言うのが、よくあるけれど大切な根拠のあるアドバイスです。
とはいえ、近年は認知症予防についての新しい知見が相次いで報告されています。
美術館へ足を運ぶ人は認知症になる人が少ない。よく笑う人ほどリスクが低い。応援するプロ野球チームが優勝すると、認知症患者の症状が改善した。配偶者が認知症になると、自分自身も認知症になる割合が高くなる――。
一見バラバラな感じがしますが、いずれの報告にも共通するのが、「人生に心が動く瞬間をどれだけ持てるか」という視点です。つまり、認知症の発症には、加齢や遺伝、生活習慣病などの要因だけでなく、想像していた以上に「感情」が深く関わっていることを示しているのです。
美術館へ行く人・行かない人
2018年に発表されたイギリスの大規模疫学研究では、50歳以上の約3900人を10年間追跡しています。その結果、数カ月に一度でも美術館や博物館、ギャラリーへ出かける人は、ほとんど行かない人に比べて、その後に認知症になる人がおよそ半分にとどまることがわかりました。
しかも、この結果は年齢や学歴、収入、持病、うつ症状、ほかの社会活動の違いなどを考慮しても変わりませんでした。


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