試合の日を楽しみに待つ。勝敗をテレビで確かめ、結果に一喜一憂する。家族や仲間と語り合う――1つひとつはありふれた日常ですが、そこには期待や驚き、会話、記憶、社会とのつながりが幾重にも重なっています。
そして優勝が近づくにつれ、久方ぶりの優勝という特別感が相まって、その心の動きがいっそう大きくなっていったと考えられます。
確かに、阪神ファンは熱狂的な人が多いですから、2023年の優勝が心を動かす大きなきっかけになったかもしれません、それでも、ほかの野球チームやスポーツ、さらには別の分野――例えば歌手や俳優でも、似たような効果は期待できるのではないでしょうか。
いわゆる「推し活」という言葉が指す本質は、誰を推すかではなく「心から夢中になれる対象があること」です。推し活そのものが認知症を予防すると証明した研究はまだありませんが、推し活を通じて生きがいを持ち、人と交流し、外出や知的活動が増えることは、認知機能を保つうえで好ましい可能性があるのです。
笑える毎日が脳を守る
「笑う門には福来る」ということわざを、医学研究は少しずつ裏づけ始めています。日本から2022年に発表された研究では、全国の65歳以上約1万2000人を6年間追跡し、「笑う機会の多様さ」と認知症との関係を調べました。
友人との会話や家族との団らん、テレビやラジオ、地域活動など、笑う場面が多様な人ほど、認知症になる人が少ないことがわかりました。特に女性では、笑う機会が最も多いグループの発症リスクは、最も少ないグループに比べて2割強低く、男性でもやや弱いながら同様の傾向がみられました。
興味深いのは、「何回笑ったか」を数えたわけではないことです。
笑いには必ず背景があります。誰かとの会話、テレビ番組を楽しむ時間、趣味の集まり、孫が遊びに来ることなど、笑いとは社会とのつながりが生み出す結果でもあるのです。大切なのは無理に笑いに持っていくことではなく、自然に笑える環境を失わないことなのだと考えられます。


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