持続的な成長を実現する「攻め」のリスク管理 特別鼎談/石倉洋子氏 × デロイト トーマツ 企業リスク研究所

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リスク管理にも
企業の独自性が必要

一橋大学名誉教授
石倉洋子
バージニア大学大学院経営学修士(MBA)、ハーバード大学大学院 経営学博士(DBA)修了。マッキンゼー社でマネジャー。青山学院大学国際政治経済学部教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授等を歴任。企業の社外取締役等も多く手がける。

石倉 経済産業省は昨年(2014年)8月、「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクトの最終報告書(通称:伊藤レポート)を公表しました。

改めて言うまでもなく、持続的な成長を実現するためには、あえてリスクを取り、投資を行う必要があります。ただ、日本の企業を見ていると、どうも「正しい答え症候群」というか、できるだけリスクを取らないようにしようとする傾向があるように思えます。「他社の事例はないのか」と聞いてくる経営者もよく見かけます。イノベーションというのは、前例がないことを実現することです。事例を集めていてはどんどん時代に取り残されることになります。

私は「ディバイド(断絶)からコネクト(つなぐこと)」と言っているのですが、これからは、自社内や国内という断絶した世界だけでなく、世の中のさまざまなものとつながることが大切だと考えています。人材も、日本人だけでなく、世界から優秀な人を採用すればいいのです。それができる時代になっているのですから。

奥村 「コーポレートガバナンス・コード」では、上場企業に少なくとも2名(注:国際的に事業展開する大企業は自主判断で3分の1)以上の独立社外取締役の選任を求めています。

季刊誌『企業リスク』では、デロイト トウシュ トーマツのコーポレートガバナンス グローバル責任者や日本企業の経営者の方々との対談などを通じて、「コーポレートガバナンスの世界的な潮流と日本企業への影響」と題した記事をまとめたことがあります(第44号/ 2014年7月号)。この中で、欧米の企業では、一つの企業の経営者や取締役でありながら、別の会社の社外取締役になっている人が多いことを紹介しました。それぞれの企業で得た知見を生かすことができるだけでなく、それが攻めのガバナンスにつながっているようです。

日本では、ガバナンスと言うと「守り」というか「間違ったことをしないようにチェックをする」といった印象をもたれることが多いですが、欧米ではむしろ、企業の成長のために、積極的に社外取締役を活用しているというイメージがあります。そのあたりは、日本の経営者のマインドチェンジが必要ではないかという話も取材時に出ました。

杉山 イノベーションに限らず、コーポレートガバナンスについても、よく「ひな形はないか」と尋ねられることがあります。企業が違うのに記述が同じということはありません。欧米の企業の例を見ると、一定のフォーマットの中で、各企業が独自性を打ち出した形で取り組みを進めています。

石倉先生もおっしゃるように、大切なのは、他社がどうしているかを気にするよりも、自社としてどのようなビジョン、どのような共通価値観を持って、グローバルなマーケットで戦うのかという点だと思います。

その支援のためにも、私たちは、グローバルベースで必要な情報を必要な切り口で集めるとともに、企業のビジョンづくりや商品やサービスのブランディングまでを含めて、日本の企業のお手伝いをしたいと考えています。

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