人手不足なのに「外国人留学生」は就職難だ 単純労働人材の拡大より先に解決すべき問題

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政府は「日本再興戦略改訂2016」(平成28年6月2日)において、外国人留学生の日本国内での就職率を3割から5割へ向上させることを閣議決定したが、目標までのギャップは依然として大きい。

外国人留学生に対するアンケート調査の結果によると、就職・定着への課題として「外国人留学生向けの求人が少ない」が最も多く挙げられており、日本企業・社会が受け入れ側の問題によって外国人留学生を「取りこぼしてしまっている」状況だ。安倍政権の「日本再興戦略改訂2016」に示されたKPI(達成すべき評価指標)は、「外国人留学生の日本国内での就職率を3割から5割へ向上」というものだが、今後ともその達成は容易ではない。

留学生は前年比2ケタで伸びているのに

ちなみに、筆者が現在所属する私立大学の大学院の経済学専攻においても留学生(中国出身が多い)が多く所属している。昨年度は同じゼミに修士の留学生が2人在籍していたが、就職活動には苦戦している様子だった。1人は不動産業界を志望していたが、かなわずに国内IT系企業に就職。もう1人はなかなか内定が出ず、国内での就職活動を途中であきらめた。修了後に家族がいるというイタリアに行って就職先を探すと言っていた。むろん、これらは筆者の周りの局所的な出来事に過ぎないが、人手不足による空前の「売り手市場」と言われる昨今の新卒採用状況に鑑みると、やや違和感を覚えた。

政府はKPI達成のため、日本語(日本語能力試験N1級のスコア修得)、キャリア教育(日本企業論等)、就職活動方法、1カ月以上のインターンシップの組み込み、などの特別プログラムを設定し、企業側にも外国人留学生の採用枠拡大を奨励しているというが、採用枠の拡大ペース以上に留学生の数が増えている可能性がある。

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