世界のトップエリートの話をしよう 容赦なくグローバル化する現代を生き抜くために
(4)多様性への対応
日本は素晴らしい国だが、1 つだけ課題があるとしたら、多様性が少ないことだと思う。世界最大の都市東京でもほとんどが日本人だ。ニューヨークでもロサンゼルスでもロンドンでもシンガポールでも、東京と比べたら、いったい誰が現地人なのかわからないくらい多様性がある。こういった都市では、エリートが所属するチームは多国籍なのが普通で、それは小学校から始まっているケースが多い。
国籍だけでなく、女性の社会進出も世界は日本より進んでいるし、年齢差別や年功序列も少ないので、多様な年代がミックスされたチームにもなっている。このように性別や年齢による多様性もあり、多くのエリートはそういった環境に慣れ親しんでいる。
(5)感情的にならない反論の仕方
エリートは批判や個人攻撃ではない反論の術を身に付けている。日本は反論が個人攻撃や批判と混同され、エスカレートしてしまうか、それを恐れて意見を言わない傾向がある。これは日本の課題だと思う。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの社是の1 つが「全員に常に反論する義務がある」だという。私はこれはいいことだと思う。反論せずに相手を信じることは美しいが、実は思考停止に過ぎない。逆に疑うことは、脳がフル稼働している状態なのだ。フル稼働させるために反論し、反論されることに慣れておくことを促してくれるのが、このシステムだ。マッキンゼーだけでなくビジネススクールやロースクールも同じような不文律がある。
(6)最悪を想定してポジティブになる
ビジネススクールやロースクール、そしてシンクタンクで徹底的に仕込まれた思考の型に“Plan for the worst, hope for thebest”というものがある。最悪を想定し、それに備えて準備して、そこからポジティブになれというものだ。
今も昔も、ビジネスこそ何が起こるかわからない世界だ。グローバル化やテクノロジーの進化でさらにそういう傾向が増している。世界最大・最強のランド研究所というシンクタンクは、最悪想定の権化である。9.11 後のテロ対策からハリケーン・カトリーナ後の対策まで準備した機関で、ありとあらゆる事態を想定して計画を作る訓練を叩きこんでくれた。
こういった経験を経ると、日本は政治・政府からビジネス界まで根拠のない楽観主義に支配されているように映る。だから激変に対する備えが不十分で、グローバル化やテクノロジーの進化に対応できていない。私は、日本と日本人には準備が足りないと思う。