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関西出身あるいは在住で「がんこの看板を見たことがない」という人は少ないのではないか。「がんこ」と聞けばすぐに、看板に描かれた、ねじり鉢巻きをした頑固そうな板前のイラストを思い浮かべるはずだ。
そのモデルになったのは、8月19日に亡くなった和食チェーン「GANKO(がんこ)」の創業者・小嶋淳司氏である。ところが、その「素顔」は、頑固どころか、柔軟な発想をする、とても人当たりのいい商人(あきんど)だった。
「おまえはほんまに頑固やな」
小嶋氏は日本の和食レストランチェーンの草分け的存在であり、関西経済界の重鎮としても知られた人物である。「がんこ」という店名は、同志社大学経済学部在学中に教授に言われた一言に由来する。
講義を受けていたとき、その内容に納得できず、実際の商売は違う、と教授に食い下がった。教授は憤慨することもなく、「おまえはほんまに頑固やな」とほほ笑んだ。
時代が変わっても、血気盛んな学生が教壇の教授に食ってかかるのは、大学では珍しくない光景である。だが、その場限りの一言をきっかけに、半世紀以上にわたり「がんこ」の名で商売を続け、関西を代表する経営者になろうとは、教授自身も想像していなかっただろう。
小嶋氏はすし屋から出発し、とんかつ店、日本料理へと業態を広げ続けた。看板の頑固オヤジが本当は何を体現してきたのか、その答えは、この一代記をたどるうちにおのずと見えてくるはずだ。


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