在学中は大阪市内の繁盛店を50軒以上見て回り、電柱の陰に隠れて店に出入りする人数を数えていた。客数と客単価から各店の儲けを推計し、いちばん利益率の高い業態を見極めようとした。
コンサルタントがいないどころか教科書もない中で、我流のマーケティング・リサーチを試みた。教室では得られない答えを、自ら探しにいくアントレプレナーシップ(起業家精神)を発揮したのだった。
人生を左右した貴重な出会い
起業準備に明け暮れる大学時代、人生を左右する貴重な出会いに恵まれた。その1人は、学生食堂で1人きりで食事をしていた憲法学の有名教授だった。
ほかの学生たちは近寄ろうともしなかったが、小嶋氏は「先生、ご一緒させてもらっていいですか」と積極的に話しかけた。すると、意外にもその教授との話が弾む。その中で出てきた「学問とは理念だよ」という言葉を聞き、小嶋氏は、理念がなければ、どれだけ勉強しても知識が増えるだけで、学ぶ目的を失ってしまうと理解する。そのうえで、その言葉を「何のために商売をするのか考えないといけないということだ」と解釈し直した。
この話を表層的に聞けば、今でいう「パーパス」ではないか、と指摘する人がいるかもしれない。だが、小嶋氏の行動をより踏み込んで分析すると、イノベーションのツボを押さえていたことがわかる。
小嶋氏は「学問とは理念だよ」を、精神論にとどまることなく、行動原理に組み替えている。これは、既存の枠組みをずらし、新しい価値の起点をつくるイノベーションの典型的な動きと一致する。イノベーション論で言うところの「問題設定の転換」である。
もう1人は、小嶋氏が自ら足を運んで教えを受けた、京都・高雄の神護寺(高野山真言宗)の和尚である。その言葉も心に残り続けた。
「商いとは人の上にある。商いを大きくするには、人としての自分を磨く以外にない」。いわゆる「ホワイトすぎる会社」で成長の実感を得られないまま「静かな退職」を選ぶ若手社員が話題になっているが、小嶋氏はあえて厳しい教えを自分から求めに行った。


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