しかも、月曜日は飲食店にとって客足が落ちやすい曜日でもある。売り上げが伸び悩みやすい一日を、新しいブランドの実験場へと変えた点も非常に合理的だ。
「毎日は難しい。でも週1日ならできる」
そんな現実的な経営判断が、この挑戦の背景にはある。
「高価格化」だけが唯一の答えではない
低価格ラーメンと言えば、近年は「ちゃん系」の存在感も増している。
どんぶりなみなみのスープにたっぷりのチャーシューをのせた一杯で、比較的リーズナブルな価格とボリューム感で人気を集めるジャンルだけに、「近くにちゃん系ができたら脅威ではないか」と尋ねると、刈屋店主は冷静だった。
「もちろんプラスではないと思います。でも、『Nii』とはカラーが全く違うので共存できると思っています」
そして、笑いながらこんな一言も添えた。
「最悪、ちゃん系より安くて、ライスも食べられますから(笑)」
価格だけを武器に戦うつもりではない。味もコンセプトも異なるからこそ、それぞれに選ばれる店になれるという自信が感じられた。
今後、「進化論」のような個人店の低価格モデルは広がるのだろうか。刈屋店主は十分に可能性があると見る。
「地主だったり持ち家だったり、食材の流通に強かったり、身内が畑をやっていたり、自分で作っていたり。そういう強みがあれば、利益をそこまで取らずにお客様へ還元したいと思う店はあると思います」
もちろん、誰でも同じことができるわけではない。しかし、それぞれの店が持つ強みを生かせば、「高価格化」だけが唯一の答えではないということでもある。
ラーメン業界では、価格改定の話題が続いている。1000円を超えることを受け入れてもらうにはどうするか――。そんな議論が中心になりがちな中で、今回示されたのは別の視点だった。
曜日を限定し、ブランドを切り分け、通常営業との相乗効果を生み出すことで、新たな価値を提供する。「690円」という価格だけを見ると、安売りに映るかもしれないが、その本質は価格競争ではなく、「どうすればお客様にまた来てもらえるか」を考え抜いた経営戦略なのだ。
ラーメン1000円時代だからこそ生まれた、690円という逆転の発想。この挑戦が成功すれば、「値上げか値下げか」という二項対立ではない、新しいラーメン店経営のモデルケースになるかもしれない。


