かつてラーメンと予約は無縁だった。行列に並ぶことも含めてラーメン文化だったからだ。
ところが近年、その常識も変わり始めた。きっかけの一つは『ミシュランガイド』だ。ラーメンが高級レストランと同じ土俵で評価されるようになり、国内外から多くの客が訪れるようになった。さらにインバウンド需要も加わった。遠方から訪れる人にとって、数時間並ぶかどうかわからない状態は大きなリスクである。そこで導入が進んだのが予約システムだったというわけだが、酷暑対策にも一役買っているのだ。
もちろん予約には賛否ある。「誰でも気軽に食べられるのがラーメンの魅力」という意見も理解できる。それでも酷暑の中で何時間も並ばなくて済むメリットは大きい。これもまた時代の変化と言えるだろう。
便利なシステムが普及する以前の暑さ対策は?
もっとも、このような予約システムがない時代にも、店主たちの中には、独自の暑さ対策を実践する人たちもいた。
20年ほど前、暑い中食べ歩きをしている中で私が最も感動したのは、「つじ田」での体験だった。行列に並んでいると、店員さんが冷えた麦茶を配ってくれたのである。
たった一杯の麦茶。しかし真夏の炎天下では、その価値は計り知れない。身体が楽になるだけではない。「お客さんを大切にしている」という気持ちが伝わってくる。「つじ田」では今もこの取り組みを続けているという。その他にも、店頭に日傘を用意している店を見て、感動したことがある。「ここまでお客さんのことを考えているのか」、そんな印象を受けた。
もっとも、これらは以前は名店ならではの気遣いのように感じられた取り組みだったが、最近では珍しくなくなった。

