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築地の有名店などで50年にわたり江戸前寿司を握った職人。大手航空会社のファーストクラスの料理を担当した一流料理人。銀座の老舗洋菓子店の元パティシエ。甲府市で110年続くワイナリーで28年働いたワインのプロ──。
これは、人口5500人の山梨県・八ヶ岳のふもとにある一軒のスーパーマーケットで、日々腕を振るう職人たちの顔ぶれだ。代表取締役の那波秀和さんは、彼らを「アベンジャーズ」と呼ぶ。
その店の名は「ひまわり市場」。たった1店舗で年商約13億円、16期連続増収・16期連続黒字の右肩上がり。だが、4億の借金を抱えた過去がある。なぜ、ひまわり市場はどん底から這い上がることができたのか。
スーパーマーケットの業界平均をはるかに上回る、正社員比率約80%、労働分配率約65%。求人広告は出していないので、採用経費は0円。なぜ、この店には一流の職人が次々と集まり、とどまるのか。
「従業員のお給料は、経費じゃなくて投資です」 「1円も値下げ交渉をするな」
那波さんの口から繰り返される言葉に、その答えがあった。
ファーストクラス料理人を呼び戻した、30年越しの約束
「昔の約束、覚えているか? うちに来いよ」
大学生の那波さんは、当時高校生だった「まる」さんとアルバイト先のファミレスで出会った。すぐに意気投合した2人は、「ヤンチャ」をした。朝まで遊んでは、夢を熱く語りあったという。
「将来、いつか一緒に店をやろうぜ。俺が店を経営する。お前は、腕がいいからコックだ!」
その言葉から30年。それぞれの道を歩んだ2人は、再会した。那波さんは、八ヶ岳の小さなスーパーで奮闘する代表取締役に。まるさんは、大手航空会社のファーストクラスの料理を担当し、有名俳優の食材選びも任されるほどの一流料理人になっていた。 「超大企業の歯車として働くことに意義を感じなくなった」と言うまるさんに、那波さんは冒頭の言葉を投げかけた。そして、こう続けた。
「うちは大手航空会社ほどの給料は払えない。でも、お前が昔の約束を覚えているんだったら山梨で一緒に仕事しようぜ。うちの新鮮な魚を、頼むよ」
