およそ半年の「悪戦苦闘」を経て、歴史的メンチカツが完成した。「松坂牛7:鹿児島黒豚3」と、スーパーの惣菜とは思えない高級食材を使用する。 食感は、サクッ。ジュワッと肉汁があふれ出す。しつこくなくて、さっぱり。けれど、甘味もある。価格は1枚税込み540円。2013年の発売当初は高くて売れなかった。けれど那波さんが心を込めたマイクで語ると一つ、また一つと売れ始める。
「料理一筋50年。人生の集大成のメンチカツ」
「最初の一口はソースや醤油を使うんじゃねぇぞ。このメンチカツ食べて、ほっぺが落ちても知らねえぞ」
全国区のテレビに取り上げられると、日本各地から客が押し寄せた。500人の行列ができ、ブラジルからも客が来た。 販売は土日のみ。12時と16時に各50枚ずつの限定で売り出される。
御年70歳の修仁郎料理長は、今でも土日に計100枚の「歴史的メンチカツ」を揚げる。
「店の外でほおばって『美味しい!』って言ってくれる人の声は嬉しいね。ブラジルからもお客さんが来たって聞いたよ。日本だけでなく“ワールド”に出ちゃってるんだから。すごいことだよね。でも自分は、『この野郎、バカヤロウ』で育ってきた昭和人間だから、なるべくお客さんと接点を持たないようにしているんだ」
座右の銘は、「苦労は、心の砥石」。あえて黙って、腕で見せる。
「前に、スーパーの惣菜部門で働いたことがあったんだけど俺とは合わなかった。なんでも安売り。せっかく手にかけて作ったのに、安売りされちゃ嫌になるよね。うちの社長は、絶対にそんなことしない。社長から、『足が立たなくなったら、車椅子を用意してでも来てもらうから!』って、言われているんだ。明日、急にポックリ逝くかもしれんけど!」
1本3万円のワインが、一気に12本売れる
「まるで、バラの香りだったんです。一瞬で、ワインの虜になりました」
ある日、手に持っていたワインの瓶を落として割ってしまった。一気にワインが空気に触れ、香りが開いた。以来、ワインに没頭してきたのが酒売り場を担当する「世界のヒライデ」さんだ。日本ワインだけで約340種類を取り扱う。 甲府市で110年続く老舗のワイナリーで28年働いたのち入社して9年目。
転職のきっかけは、以前からの知り合いだった那波さんに、 八ヶ岳への移住を検討していると話したこと。その際、「辞めるんだったら、うちに入ってくれ」と頼み込まれた。那波さんは、前職時代のヒライデさんの「物腰が柔らかくて、お客さんに好かれる」姿を目にしていたのだ。
