まるさんは妻子を連れ、成田から引っ越した。そして今では、当時の給料を超す──。
ひまわり市場で働く従業員は46名。築地の有名店などで50年にわたり江戸前寿司を握った職人や、銀座の有名洋菓子店の元パティシエなど、その道のプロが集う。
「求人広告を出していないので、採用経費は0円です。それでも、うちには優秀な『アベンジャーズ』が集まるんです。アベンジャーズが最高の商品を仕入れ、最高の腕前で料理を作ってくれる。だから俺が、マイクで売る」
那波さんは従業員を「アベンジャーズ」と呼ぶ。つまりは、最強のヒーローたち──。
職人の「悪戦苦闘」が生んだ、500人の行列ができるメンチカツ
「マイクを握った時に心がけていることは、嘘をつかないこと。徹底的に調べます。生産者のこれまでの人生や性格、好きな女性のタイプ……、そこまで含めて『仕入れ』です。薄っぺらい言葉じゃ、伝わりません」
そう語る那波さんのマイクパフォーマンスが、店内に響きわたる。
「酒と女にゃ目がないぜ! 酒のつまみになる野菜しか育てない男が作った採れたてアスパラ!」
アベンジャーズのおかげで生まれた「武器」もある。2011年、4億の借金を抱え倒産の危機に直面したが、奇跡的に事業再建のチャンスを得た那波さんは、経営の立て直しに奮闘していた。
「ひまわり市場の武器がほしい。『これ』を目指してお客さんが来てくれる『飛び道具』がほしい」
そこに登場したのが、修仁郎料理長だった。那波さんは修仁郎料理長が入社するやいなや、「日本で一番、うまいメンチカツを作ってくれ!」と頼み込んだ。
「うちの社長、ちょっとおかしいよね」と笑う修仁郎料理長は、肉屋や八百屋を経て、長きにわたり居酒屋で腕を振るってきた料理人だ。
「松坂牛と黒豚でメンチカツを作れだなんて。普通、メンチカツってのは肉の端切れで作るんだから。普通に食べて美味しい肉なのに、あえてメンチカツにするなんて誰が考える? うちの社長、そんな無茶ぶりばっかりしてくるんだもん(笑)」
