さらに、インターネットの登場によって、今度はこのような都道府県の事実上の経済圏統廃合が加速しているわけですから、いつまでも昔の構造を国が踏襲して施策を打ち込んでも、無理があるわけです。
情報収集でも「三重苦」、正確な政策立案は不可能
無理というのは、情報を集めるうえでも、事業を実行するうえでも、両方の意味でです。
地域活性化の情報を集めるのにあたって、ほとんどの場合、活性化事業で成果をあげているのは民間です。すると国は、都道府県や国の出先機関に「地方にいい事例はないか」と聞きます。都道府県は市町村に聞いて、市町村は普段から補助金を出している地元の民間団体に聞き取りに回ったりします。
国の出先機関も、過去の補助金支給実績のある民間団体に聞いて回ります。こうして集まった情報を、今度は上(都道府県や、国)に戻していくわけです。
ここで3つの問題があります。
まず1つは、こんな伝言ゲームをしていたら、伝わる情報も伝わらない、という話です。しかも毎度、実践者ではない役人のフィルターが入りますから、事例の概要や分析について、偏りがどんどん生まれていってしまいます。それが2度、3度と重なっていくわけですから、上に行く頃には・・書いているだけで、うまくいかないのがよくわかりますよね。
「え、それって間違いでしょ」という事例紹介が普通に行われていたりするわけです。まあ、本人は見たことも聞いたこともないことを、人から聞いた情報だけで政策の資料にするわけですから、当たり前です。
もう1つの問題は、都道府県も市町村も国の出先も、「補助金をもらっていない民間団体の取り組みについて知らない」という現実です。
実際に、「商店街での成功事例◯◯選」といったものを国が企画してやった時も、都道府県・市町村・国の出先機関などが調べて行ったのですが、驚くほどに、補助金をもらっている取り組みばかりでした。ある意味で、おカネをもらいにくる民間とは接点があるものの、補助金もらわずに成果を収めているような地域での本当の取り組みの人たちとは、接点がないのです。
そして3つめ、何より問題なのは、「失敗した情報」は伝わらない、ということです。当然伝える側は自分たちが損する情報など、上にはあげるはずがありません。民間も、市町村も、都道府県も、国の出先機関だって当たり前です。結局のところは、都合の良い補助金を使って、なんとなく成果が生まれたような感じのところを、事例にまとめるしかないわけです。
事実、今年の9月9日、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が、今までの地域再生関連政策の総括を求める安倍総理の指示に基づいて、各省庁に失敗事例について聴取すると、過去の政策の失敗を告白したところは「ゼロ」であったといいます。
つまり、どの省庁も「どれも失敗していなかった」と解答したわけです。「これは失敗作でしたということは言いにくい」と石破地方創生相も認めていますが、このように、都合の悪い情報は集まらず、都合のよい情報ばかりが集まってしまうわけです。
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