INDEX
7月、東京の駅の自動改札。
ひとりのスペイン人男性が改札を飛び越えた。隣にいた日本人は驚いた顔で彼を見ている。
初めて日本を訪れたブルーノ・オチャイタ(46)は、ICカードの読み取りエラーで目の前のゲートが閉まり、慌てて改札を越えてしまったのだ。
妻のバネッサ・デル・カスティージョ(47)は、その時のことをこう振り返る。
「ブルーノはちゃんと運賃を支払っていたので、その後も問題にはなりませんでした。スペインでは開きっぱなしの改札なんて、見たことがなくて……。しかもゲートが閉まっても、簡単にまたげてしまうなんて」
「信頼の表れ」と映った日本の自動改札
ヨーロッパで暮らしてきたふたりが見てきた自動改札は、普段は閉じていて、ICカードをかざすと開くものばかりだった。日本は逆だ。普段は開いていて、問題が起きたときだけ閉まる。しかも、ゲートは膝の高さまでしかない。
バネッサは、こう付け加える。
「日本の改札は最初から人を疑っていない。疑うのではなく、まず信じてみる。そういう設計に見えたんです。ルールを守るかどうかはその人の良心次第、と言われているかのようで。これを見ただけで、安全な国なんだと思いました」
その認識は、半分は誤解かもしれない。普段開いている自動改札は本来、通勤ラッシュでもスムーズに対応できるよう「効率」が重視されたものだ。
けれど、その「効率のための設計」が、彼女の目には「信頼の表れ」と映ったのだ。


※ログイン後、コメント入力が可能です。