「僕が住むスペインの街では、救急車のサイレンは1日2回は聞きます。首都に住んでいたころは、10分に2回は聞いていたんじゃないかな」
冗談っぽくそう言って、ブルーノはガハハと笑った。
静かにルールを守ることが、子どもにとっていいことなのか
静けさに驚いたのは、街中だけではない。三鷹の森ジブリ美術館を訪れたときのこと。館内にある大きなネコバスの遊具の周りには、大勢の子どもたちが集まっていた。ふたりと娘は、中には入らず外から眺めていた。
ブルーノ「係の人が子どもたちに遊び方を説明していることに驚きました。それを守って子どもたちが、時間制限内で楽しそうに遊んでいた。それに大きい声を出したり叫んだりしている子が、ひとりもいなかった」
彼には、それが良いことなのか悪いことなのか、すぐには判断できなかったという。
「礼儀正しくは見えるけど、子どもの頃から抑えつけられていたら、フラストレーションが溜まるのではないかと気になりました。僕が子どもなら、『自分のやり方で遊びたい』と逃げ出したくなる。規則が絶対だと、不満があっても、仲間外れにされたり悪く思われたりしそうで言い出せない。不満を持つこと自体に罪悪感を覚えることもあるんじゃないかな」
「私はそうは思わなかった」とバネッサが反論する。
「抑えつけられているようには、まったく見えなかった。むしろ楽しそうで幸せそうでした。好き勝手に遊ばせることが、幸せになるために必要なのかな。大声を出したり、地団駄を踏んだりできるから幸せ、というわけではないと思う。ルールはあっても、子どもたちにとってはそれが当たり前で、自由を制限されているとは感じていなかった。少なくとも私にはそう見えました」


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