だから運転前の1杯は「違法ではない」という感覚が、スペイン社会に根づいているのだ。
もっとも、スペインでもこの感覚は変わりつつある。交通総局(DGT)は、基準値を0.1mgまで引き下げることを目指している。2026年3月に議会で一度否決されたが、再び実現を目指す動きが続いている。
こうした日本の秩序に戸惑うことはあっても、ふたりの心にいちばん残ったのは、別のものだった。
日本人のもてなしに触れて
日本に来る前、ふたりはこの国を、少し「冷たい」場所だと想像していたという。
日本にはハグの文化がない。人との身体的な接触も少ない。頬にキスをして挨拶するスペイン人からすると、礼儀は正しくてもどこか距離のある人々に思えた。「親しさをどう表現するのか、見当がつかなかった」という。その予想は、旅の中で何度も裏切られた。
最初に気づいたのは、東京のアパレルショップだった。
ブルーノ「たくさん回ったけど、店員さんがフレンドリーで、本当に親切でした。リラックスできる雰囲気を作ってくれて、欲しいものも何でも見せてくれた。若い人たちばかりだったけど、プロフェッショナルという感じがしました」
旅の後半、能登半島の小さな海辺の町を訪れた。そして、旅の間ずっと探していた郵便局を、ようやく見つけた。スペインの知人に、絵を描いたはがきを送りたかったのだ。ただ、はがき一枚を送るだけ。それだけのはずが、思いがけず温かい時間になったという。
ブルーノ「窓口の方は日本語しか話せなかったけれど、身振り手振りを交えて、丁寧に対応してくれました。途中で、一緒に写真も撮って、責任者らしき男性がアヒルの人形をプレゼントしてくれました」
「本当に気持ちの良い人たちでした」とブルーノは笑顔を浮かべた。


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