「美味しいものを安く売る」だけでは商売は続かないと痛感した今野さんは、「波の」の商品設計を見直した。回転寿司でも使われる一般的ないくらから、キロ約3万円する希少な「黄金いくら(ヤマメの卵)」まで、品質ごとに価格帯を細かく設定。数多くの選択肢を用意することで、どの層にも来店してもらいやすく、原価が高い商品でも利益を確保できる仕組みを作った。
ちょうどInstagramが広がり始めた時期とも重なり、高級いくら丼は、インフルエンサーやYouTuberの投稿で話題となる。一杯3000〜4000円という価格にもかかわらず、女子高生や女子大生が店を訪れる人気店となり、「波の」は赤字からの立て直しに成功した。
この経験を踏まえ、次に挑戦したのがサーモン丼専門店「熊だ」だった。サーモンはいくらほど価格が大きく変動しない、と確認してから開店。仕入れは、長野県の養魚場と直接関係を築き、安定して品質の良いサーモンを届けられる体制を整えた。もちろん、原価率40%ルールも最初から前提に据えた。
「僕のこだわりは、サーモンの身を厚く切る方法で。その方が美味しそうに見えるんですよね」
今野さんの感覚から生まれた盛り付けは、思いがけずSNSで話題となり、「熊だ」も人気店へと成長していった。
ポークステーキの誕生から最高峰を目指すまで
「波の」や「熊だ」は、いくら丼やサーモン丼の専門店としてだけでなく、昼夜ともに多くの客でにぎわっていた。
そこで今野さんが次に目を付けたのが、「せんべろ」だ。せんべろとは、1000円程度でお酒や料理を気軽に楽しめる、リーズナブルな居酒屋スタイルのこと。2018年、車戸塚駅に立ち飲みスタンド「デイリーマサヨシ」をオープンし、おつまみ3品と最大4杯のドリンクが付く1000円程度のセットを看板に据えた。
「安く、でもしっかり楽しめる」デイリーマサヨシも多くのお客さんに受け入れられた。
ここで提供したメニューの一つが、厚切りのトンテキ。分厚い豚肉を使った一皿は予想以上の反響を呼び、これまた「専門店にしたら面白いんじゃないか」という今野さんの発想につながっていく。


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