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キャリア・教育

【吹奏楽部】は「STEAM教育」の先駆けだった?「理数」「探究」の要素満載なのに、なぜ「情操教育」から進化できなかったのか

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吹奏楽イメージ
次期学習指導要領の議論が進む中、再考すべき「吹奏楽部の価値」とは?(写真:myconcept/PIXTA)
  • 渡郶 謙一 北海道教育大学音楽文化専攻合奏研究室 21世紀現代吹奏楽レパートリープロデューサー
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チューナーを見て1音ずつ合わせるチューニングでは、基音の周波数を機械的に一致させるにとどまる。一方、純正律の和音に合わせる練習では、奏者は音のズレ(倍音同士の干渉)によって生じる「うなり」の有無を体感しながら音程を探ることになる。

周波数が正しく一致したとき、うなりが消え、響きが澄む。この感覚を手がかりにすることで、単音チューニングよりもはるかに高い精度で、濁りのない適切な音の高さに寄せることが可能になる。音の物理現象を体感で掴み、自身の耳と身体で微調整するこの訓練こそが、奏者の音楽的進歩にとってきわめて重要であると考える。

メトロノームを使う練習はどうか。一定のテンポに合わせて演奏する練習は、時間軸を等間隔に分割し、その上に音符の長さを正確に配置する行為だ。4分音符を均等に刻む、8分音符を正確に2等分する——これはまさに数学的な比例・分割の概念を、身体の動きとして実装する作業である。つまり、日本中の吹奏楽部はすでに「理科」と「数学」の応用を毎日実践している。

予算も設備もいらない「STEAM指導」、3つの実践

この本質を自覚したうえで、指導をもう一段階深めるにはどうすればよいだろうか。特別な予算も設備もいらない3つの実践を提案したい。

【実践1】「もっとよく聴いて」を、科学の言葉に置き換える

音がきれいに揃わない場面では、従来なら「もっとよく聴いて」で終わっていたのであれば、「今、音がうねっているのは、二つの周波数がわずかにずれて"うなり"が生じているからだ。1秒間に3回うねっていれば、音程差は3Hz」など、現象の「理由」を一言添える。

それだけで、「なんとなく合わせる」から「なぜ合うのかを理解して合わせる」への転換が生まれる。コンクール前の追い込みではなく、こうした「なぜ」を日常の練習に埋め込むことが、探究型の部活動への第一歩だ。

【実践2】スマホ1台で「倍音」を可視化する

無料のスペクトラムアナライザーアプリを使えば、楽器の倍音構成をリアルタイムで視覚化できる。「クラリネットは奇数倍音が強い」「フルートは基音が際立つ」といった教科書の記述が、自分の楽器から出る波形として目の前に現れる瞬間、生徒の目の色が変わるはずだ。

「倍音構成が近い楽器同士はブレンドしやすい」という気づきは、オーケストレーションの原理を体感で学ぶことそのものだ。生成AIを活用すれば「なぜこの組み合わせが美しく響くのか」を理論的に言語化する手助けも得られる。次期学習指導要領が掲げる「ICTの日常的活用」は、ポケットの中のテクノロジーで今日から始められる。

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