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キャリア・教育

【吹奏楽部】は「STEAM教育」の先駆けだった?「理数」「探究」の要素満載なのに、なぜ「情操教育」から進化できなかったのか

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吹奏楽イメージ
次期学習指導要領の議論が進む中、再考すべき「吹奏楽部の価値」とは?(写真:myconcept/PIXTA)
  • 渡郶 謙一 北海道教育大学音楽文化専攻合奏研究室 21世紀現代吹奏楽レパートリープロデューサー
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外国語もまた然り。ただし、ここで言う「外国語」とは単に英会話を学んだり、単語を暗記したりすることではない。音楽は、作曲家の「祖国の言葉」の響きやリズムが宿る。ジョン・ウィリアムズの『スター・ウォーズ』(1977年)を聴けば、あの堂々たるファンファーレの奥に、英語という言語が育んだ楽天的で雄弁なアメリカの文化感が脈打っていることに気づくだろう。

一方、ドビュッシーの『牧神の午後への前奏曲』(1894年)には、フランス語特有の鼻母音のまろやかでやわらかな語感が、そのまま和声の色彩となって滲んでいる。楽譜を通じて異国の言語感覚に触れること――それは、単語帳を繰るよりもはるかに深い、「言語と文化の本質への接近」にほかならない。

しかし重要なのは、合奏では、こうした5教科の知識が「身体」を通して1つに統合される点にある。哲学者が言う「暗黙知(言葉にできない知識)」や「行為の中の知(動きながら考える力)」のような高度な判断力が、放課後の音楽室で毎日鍛えられているのだ。

そもそもSTEAM教育とは、2000年代後半にアメリカで推進されていた理数系教育「STEM(科学・技術・工学・数学)」に「A(Arts)」の要素を統合した教育フレームワークだが、この「A(Arts)」は単なる美術や音楽の技能ではなく、教科横断的な知を統合し創造的に応用する力を指す。吹奏楽部は、この広義のArtsを意図せず体現してきた、学校における稀有な現場だったのである。

実はすでにSTEAMを実践している「あの練習」

「そんな大げさな話だろうか」と思った指導者がいるかもしれない。だが、ほとんどの吹奏楽部が日常的に使っている道具を思い浮かべてほしい。

ハーモニーディレクターやキーボードで基準音を鳴らし、全員がそこに音を寄せていく——あの練習は何をしているのか。演奏者が「あるべき周波数」を耳で捉え、自分の音との差異を聴き分け、唇や息のスピードを微調整して周波数を一致させる行為だ。合奏全体の「濁り」が消えていくのは、複数の波形が干渉し合い、うなりが減少していく物理現象にほかならない。

チューナーも同様だ。針の振れを見ながら音程を合わせるあの行為は、周波数という物理量を視覚的にフィードバックし、身体操作で修正するプロセスである。つまり吹奏楽部は、日々の基礎練習の中で「理科の応用実験」を繰り返していることになる。

筆者はこの「応用実験」をもう一段深く実践している。吹奏楽部を直接指導する際にしばしば行うのが、ハーモニーディレクター等のキーボードで「純正律(きれいにハモる和音)」を鳴らし、そこに1人ひとりが自分の音をマッチさせるという練習だ。

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