エンパスは、現代の精神医学で正式に診断されるような「病名」ではありません。
しかし、人間関係において「どこまでが自分の責任で、どこからが他人の課題なのか」という心の境界線の問題や、人に気を遣いすぎてヘトヘトになってしまう「感情労働(自分の感情を押し殺して他人に配慮する働き方)」のメカニズムを紐解くうえで、近年、心理学や臨床の現場でも大きな意義を持つようになってきているのです。
「エンパス」という言葉は共感を意味する「empathy」が由来で、1956年に発表された小説で初めて使われたとされています。
現代社会において、友人や職場の人間関係の中で、本人が自覚しないうちに支配的な人たちの「ストレスや感情のゴミ箱」としての役割を担わされてしまう優しい人たちの姿を、これほど的確に表している言葉はありません。
エンパスとHSPの違いとは?
私たちの脳内には、他人の行動や感情をまるで自分自身の体験であるかのように自動的に写し取る「ミラーニューロンシステム(MNS)」という神経ネットワークが備わっています。
エンパスの人の脳内では、このミラーニューロンシステムが「過剰同調的」に働く、つまりアンテナの感度や精度が高すぎる状態になっているのです。環境の中にある刺激や他人の発する感情のサインを平均的な人よりもはるかに敏感にキャッチし、自他の境界線(自他を隔てるフィルター)を通さないまま自分の神経系に直撃させてしまいます。
エンパスの人は、他人の感情をただ頭で「あの人は悲しいんだな」と理解しているわけではありません。
ミラーニューロンシステムを使って、他人の悲しみを「自分の経験として予測」し、擬似的に体験してしまっているのです。だからこそ、人の悩みを聞いた後や、満員電車に乗った後に、どっと体が重くなったり、寝込んでしまったりするほどの激しい疲労を感じるのです。


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