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「あなたのお母さんと私が別れて暮らす前日の夜、私がお別れの話をしたのを覚えていますか?」
不意に目に飛び込んできたその文章に、私は釘付けになった。
「今考えると、私はあなたにとても可哀想な質問をしました。『パパとお母さんと、どちらと一緒に暮らしたい?』。その私の、あなたの心を顧みない残酷な問いに、あなたは『パパ』と答えてくれました。私はその時のあなたの言葉を胸にしまっているから、今も生きていられるのです」
丁寧に書かれた文字から、娘を想う父親の思いがにじみ出ていた。
鉄格子の向こうから届いた、娘への「ラブレター」
しかし、この手紙が書かれ、今展示されているのは、かつて刑務所だった場所である。罪を償う「塀の中」で、彼を生かしていたのは、鉄格子の向こうの愛する人を想う「心の自由」だったのかもしれない。
ここは「旧奈良監獄」。明治政府が威信をかけて造り上げ、約100年にわたり行刑施設として使われた、美しくも冷徹な建造物だ。2017年に役目を終え、同年、重要文化財に指定された。

