社会から隔離するのではなく、再び社会へ戻すための更生所。展示エリアA棟「歴史と建築」では、元刑務官のインタビュー映像が流れており、初老の男性が、モノクロの画面上で語っていた。
「一番嬉しいのは、彼らが仮釈放で出ていくときです。親と一緒に出ていく後ろ姿は何とも言えないです。しっかりやってくれたらいいなと思いながら見送りました」
「私も、受刑者と同じではないか」
つづいて、展示エリアのB棟「規律と暮らし」へと進む。
ここでは、刑務所という特殊な社会での生活が、グラフィカルに展示されている。壁一面を埋め尽くすのは、おびただしい数の「規律」だ。起床から就寝、布団の畳み方、入浴の時間、日用品の数。すべてが分刻みで管理されていることがうかがえた。
月に1回は散髪があり、男性の髪型は3種類から選べ、ミリ単位で調整できる。女性はショート、セミロングの中から選べるという。展示室には、髪型のサンプルとしてマネキンが置かれていた。
息苦しいほどの管理社会だ。そう思いながらも、「月に1回って、私より多いじゃない?」と可笑しくなった。牢屋の外にいる私と大して変わらないのでは、と。
その疑念が確信に変わったのは、この収容所の規律本が大きく展示されている部屋に入ったときだ。すれ違った若い女性客が壁を見上げながら、少しため息混じりに「でも、私も会社からこれと同じくらいのルールブックをもらったわ」と言ったのだ。
足が止まった。鉄格子の外にいるというだけで、この社会は完全に解き放たれているとは言い切れない。
刑務所の外では、思うままに場所を行き来し、その場を離れることもできるはずなのに、それができない人がたくさんいる。何かに所属することにより、ルールや規則を守るという不自由さを引き受けている。それは人と向き合い、社会を維持するために必要なことだが、時には心を蝕んでいくこともある。
同ミュージアムの館長、八十田香枝(やそだ・かえ)さんにそのように伝えると、こう返って来た。
「『受刑者は自分とはまったく違う人間だ』と思っている人ほど、何か訴えかけられるように感じるかもしれません。正社員として働き、月曜日から金曜日まで仕事をしている人にとっては、『あれ、私も受刑者と同じじゃない?』と思う瞬間がある。自由なふりをして、実は社会の枠組みにとらわれているというか、制限されている部分があるんですよね」

