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星野リゾートが「旧奈良監獄」をミュージアムに…「私も会社から同じくらいのルールブックをもらった」来館者の一言の重さ

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遺構として刑務所時代のまま保存されている、独居房が並ぶ長い廊下
遺構として刑務所時代のまま保存されている、独居房が並ぶ長い廊下(写真:編集部撮影)
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塀の外を見つめる受刑者のモニュメントにそっと手を添える神さん ※通常、来館者が展示物に手を触れることはできない(写真:編集部撮影)

「僕のゆめは……」で途切れた言葉

かつて医務所だったC棟は、「監獄とアート」のエリアだ。5組の現代アーティストの作品が並ぶ。 そのひとつ、奈良県出身のアーティスト、西尾美也さんの作品「声を縫う」。受刑者が残した詩を、市民の手で刺繍へと紡ぎ出した参加型作品だ。

受刑者の詩を縫い込んだ奈良県出身のアーティスト、西尾美也さんの作品「声を縫う」(写真:編集部撮影)

神さんが、ふと「僕、この言葉が好きなんです」と言い、無数の布の言葉のひとつを指さした。「ぼくのゆめは……」と書いてあった。

「これを書いた少年は、この言葉の続きを書かなかったんです。この『……』には、いろんな思いがあったんでしょう」

展示の最後にある部屋では、冒頭で紹介した、受刑中の父親から娘への手紙を読むことができる。手紙を読み終え、胸が詰まったままミュージアムの外へと出た。

中庭に足を踏み入れると、穏やかな風が吹き抜けている。その開放的な空気に背中を押されるようにして、神さんが口を開いた。

中庭と隣接したミュージアムの通路(写真:編集部撮影)

「ここには、変わろう、変わりたいと思う人に来てほしいなと思います。明治政府がまさに三等国から変わろうとした、そういうきっかけの場所です。そして、受刑者も更生しようとした場所ですから」

当たり前が当たり前でなくなったとき、そのありがたさに気づく。巷でよく聞くこの言葉を、改めて考えた。食べること、寝ること、家族が揃うこと。普段、贅沢とも思わず消費している日常。それが鉄格子の向こうでは、どれほど切望されたものだったのか。刑務所の外にいる人も、選択肢を持っているはずなのに、忙殺されていく日々の中で「選択し続けること」を放棄しているのではないか――。

来館者はここで、誰かに伝えたい想いをカードに記し、特別なポストに託すことができる。

「何かにとらわれていても、大切な人に愛を伝えることを恐れないでいよう」

そんなことを書いた。自分に対するメッセージだった。

ミュージアムでは、感想や受刑者へのメッセージをカードに記し、特別なポストに託すことができる。それらを受刑者に渡すことも検討されている(写真:筆者撮影)

人を縛っているのは何か。本当にその場所は、「自由な場所」と言えるのか。明治の監獄は、今を生きる私たちに問いかけている。

ところで、この問いを来館者に投げかけるミュージアムと同じ敷地に、星野リゾートは6月25日、「48室すべてがスイート」というラグジュアリーホテルを開業した。なぜ、話題を呼びそうな「監獄体験ホテル」の道を選ばなかったのだろうか。後編では、その判断の理由に迫る。

《続けて読む→→》後編:「元独居房をぶち抜いたスイート」1泊14.7万円は悪趣味か…「耐震工事だけで60億円」星のや奈良監獄が"高くない"理由 

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