「明治の頃は水洗トイレがありませんでした。一部屋ずつ水を流す仕組みがなかったから、なんと、桶でした。受刑者は桶に済ませたら、一カ所に集めていました。ここは2階ですが、その場合は一ヶ所に集め、専用の穴から釣瓶を降ろすわけです。当時は畑の肥料にするために集めて買う業者がいました」
扉に「頭すら出ない大きさ」の穴が3つある理由
部屋と廊下を仕切る厚みのある木の扉には、3カ所に四角い穴が開いている。上部は中を見る穴。食事を入れるのは、一皿分が通れるくらいの一番下の小さな穴である。中央の縦長の穴は、「中をのぞくとき、死角ができないように」と近年作られたという。
「食事を運ぶときは、あえてお盆は使わなかったそうです。開口部が大きくなると、そこから逃げるかもしれない。だから頭すら出ない大きさの穴なんです」と神さん。
一皿ずつ中に出し入れするのは、さぞ大変だったろう。なにしろ、第三寮だけで全96室の独居房である。急に受刑者の具合が悪くなることもあるはずだ。独居房の中から中央看守所にいる刑務官に連絡を取りたいとき、どのようにしていたのだろうか。
そう思っていた私に、神さんが微笑んだ。「中に入って、ボタンを押してください」。独居房内で、指の爪サイズの鉄でできたボタンを押すと、鈍い振動が指に伝わった。

