現在、その保存・活用を担うのが星野リゾートだ。構想から約7年。広大な敷地を持つ刑務所は、いま2つの施設として生まれ変わっている。
少人数で全体を見張れる「放射状」の設計
重厚な赤レンガの門をくぐると、そこには、まるでヨーロッパの宮殿のような荘厳な建築が広がっていた。
頑丈に囲まれた壁に沿って歩いていく。植物が生い茂る敷地内は、どこかジブリ映画の世界を彷彿とさせる。敷地面積は約10万平方メートル。甲子園球場の約2.5倍だという。「本当に広い……」と素直な感想が漏れた。
「このあたりは、鹿も時々入ってきます。あそこの木陰に集まっていますよ」
案内をしてくれた学芸員、神剛司(かみ・こうじ)さんが笑う。奈良駅周辺の道路でも鹿が我が物顔で歩いているが、この国の重要文化財も、鹿にとっては絶好の憩いの場なのかもしれない。
この敷地にある2つの施設のうち、ひとつが、2026年4月27日に開館した「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」。私がいま向かっているのは、こちらだ。もうひとつは、6月25日に開業したラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」である。宿泊者だけの空間となるホテルに対し、ミュージアムは誰もが日帰りで訪れることができる。
入館料は大人2500円、海外在住者は3500円。一方で、奈良県在住者は2000円に設定されている。かつて、理容室などを通じて地域と交流を持っていた「開かれた刑務所」の歴史を尊重し、地元の人が訪れやすいように配慮した価格設定だという。
最初に案内されたのは看守所だ。ここから5つの収容棟が放射状に伸びている。この独特な設計は、「ハヴィランド・システム」と呼ばれる合理的な構造だ。

