さらに、偶然も味方した。外カリッ&中モチッのために多くの試作を重ねていくうちに、「底もカリッ」という新たな食感が生まれることを発見したのだ。こうして開発から半年後、ついに塩パンが完成。初めて口にした将武さんは、その感想をこう語る。
「僕が伝えたパンはもっと細く、もっと固かったのです。ところが父が出した塩パンは、ころんとした形で中はもっちり。バターと塩の塩梅も良く、こんな風にアレンジされたんだと驚きました。お年を召した方、市内に住む方々、皆に愛される味と食感を追求して、この形になったんだなと。改めて町で愛されるパンの大切さを感じました」
漁師が発見! そこから女子高生、主婦へと広がった
この新商品の塩パン。65円で販売スタートしたのだが(現在は95円)、当時50円のバターロールよりも売上げで負けていた。パン・メゾンの目玉は、開店当時からメロンパン。塩パンの人気は、他のパンと同程度。最初は無料で「お試し」として渡していた。それでも約4年間は、話題にならなかったそうだ。売れても、1日10個ぐらいの頃もあった。ところが、ここから思わぬ広がり方をしていく。
八幡浜市にはミカンの町であると同時に、四国でも大規模な魚市場がある。
「最初にこの塩パンのポテンシャルに気づいたのは、その市場で働く人々や、漁師の方でした」
漁師といえば、夏場の炎天下で汗をかきながらの重労働をこなす仕事。さらには、美味しい魚をよく知っているので、味にもうるさい。
「魚市場の方々が買ってくださるようになり、美味しいと口コミで徐々に広がっていったのです。それとほぼ同時期、地元の女子高生も塩パンを手にとってくださるようになり、ありがたいことに話題に。そこから、娘さんに『塩パンも買ってきて』などと頼まれた主婦の方々も口にするようになって、ファンになってくださる方が増えていったのです」
地元の人に愛されるパンを作りたい──その想いが、ついに結実したのだ。この現象について将武さんは「それは、驚きましたよ」と振り返る。
