だが、1997年頃、全国大手のパン企業がこれを合併吸収。「ハチキョーベーカリー」の名が消えることに抵抗があった平田さんの父・巳登志さんが独立して「有限会社ハチキョーベーカリー」を起業、「パン・メゾン」をスタートした。これが人気となり、2015年にさらに広い立地が得られる現在の場所へ移転したという流れだ。
その店で最も人気の塩パンについて、平田さんはこう話す。
「1日6000個売れる日もありますが、平均すると平日で3000個弱。土日で4000個ほどの購入があります。パン業界では、1日100個売れたらヒット商品と言われていますから、この数字は異例ではありますね」
店のある愛媛県八幡浜市は、人口減少に悩む四国でも、過疎化が著しい市だ。2005年に隣の保内町と合併をして、人口約3万人から約4万1000人に増加はしたものの、2026年現在の人口は約2万9000人と今も減り続けている。しかも、人口の約42.3%が65才以上。そんな地域において、これだけの販売個数があるというのは驚きだ。
なぜ、それほど売れるのか。
「全国から買いに来てくれるからです。テレビで取り上げていただいたこともあり、『塩パンの元祖が食べたい』と旅行がてら買いにいらっしゃってくださるんです。大阪から電話が来て、『300個まとめ買いがしたい』と来られた方もいらっしゃいました。お土産として近所の人に配りたいというお話だったので、こちらも、なるほど、と。心を込めて焼かせていただきました」(平田将武さん、以下同)
あえて、レシピを囲い込まなかったわけは?
この、塩パン。もともとは、パンの売上が落ちる夏にも売れるパンをつくりたいと、父・巳登志さんが、高知で修行中の将武さんに相談したことがきっかけで生まれた。将武さんの働くお店では、バターを入れたカリッとした生地の上に塩を振ったパンがよく売れていた。
それを巳登志さんに伝えたところ、高齢者の多い地元に合わせ、外カリッ&中がモチッとしたソフトフランスと呼ばれる生地に、熱でも溶けない絶妙な辛さの岩塩を振った、「塩パン」が完成した。開発期間は半年。2003年のことで、2004年に販売を開始したそうだ。
