「NHK辞めた敏腕P」フジテレビに転職した"動機" NHKでは報道記者も経験、なぜ民放のドラマPに?

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「4話は子どもを産まない選択をしている女性の葛藤と、小学生の生理の葛藤を描くことは決めていたのですが、この繊細かつ、とても難しい物語を書いてくださる方が見つかるかは不安でした。

ドラマ『舟を編む』(2024年)と『しずかちゃんとパパ』(2022年)が本当に素晴らしく、いつかご一緒してみたいと思っていた蛭田直美さんしかいないと思い、ダメ元で会いに行きました。蛭田さんはキャリア的にも1人で書き切る仕事以外は受けてくれないだろうと思っていましたが、とにかく頭を下げて、熱量高く、助けてくださいとお願いしたら奇跡的に引き受けていただけました」

――共同脚本体制ではなかったのですね。

「NHK時代の先輩である保坂慶太さんが手がけた『3000万』(2024年)のような共同執筆のスタイルでは今回は作っていなくて、企画と人物設定、毎話何を描くのかのテーマや大枠は僕が決めて、それぞれの脚本家さんと個別に話ごとにやりとりして、台本を作っていきました」

日本一の最低男
男性2人で子育てに奮闘するという新しい家族ドラマ(フジテレビ提供)

「NHK記者」の経験が生きた

北野さん
北野拓(きたの・ひらく)/NHKで報道記者からドラマ制作へ。『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』『あなたのそばで明日が笑う』のプロデューサー、『宮崎のふたり』の演出を担当。NHKエンタープライズへ出向中には、WOWOW『フェンス』(第61回ギャラクシー賞テレビ部門大賞)を企画プロデュース。その後、フジテレビに転職し、『日本一の最低男※私の家族はニセモノだった』を手掛ける(写真/本人提供)

――北野さんはNHKでドラマを作る前、報道記者をやられていて、そのキャリアが、ネットの問題を描いた『フェイクニュース』(2018年)や、WOWOWで沖縄問題に向き合った『フェンス』(2023年)に生かされていると感じます。『日本一の最低男』の制作準備期間はNHK時代より短かったそうですが、北野さんが取材をされたのでしょうか。

「当然、NHK時代と同じく自分で取材して、監修の先生も決めて、各話それぞれ専門家に入ってもらっています。第2話だったらジェンダーセクシュアリティ監修の方に入ってもらい、プロット作りの段階からご相談させてもらいました。第3話は不登校監修の方にアドバイスをいただきながら、当事者の方々にも取材して作りました。それぞれの問題にアプローチする際にどういった視点が大事なのか、何を描くべきかは取材して決めていきました」

――短期間ながら取材を徹底してやったと。

「僕はNHK時代に沖縄で事件記者をやっていたので、短期間で取材することにも多少は慣れています。この課題の問題点は何か、本質的に何が問題か、エッセンスを素早くつかみ、ニュースとして伝える経験を積んできました。今回、描いた社会課題はすべて個人レベルでは容易に解決しない問題で、政治的な解決が必要なものばかりです。ドラマの前半で主人公がそうしたことに気付き、それが終盤、主人公を選挙に駆り立てるという構成になっているんです」

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