地域活性化のカギを握るのは
「人材」と「地域金融機関」
トーマツが、地方創生を支援する
「金融活性化推進室」を設立へ
有限責任監査法人トーマツは、「トーマツ金融活性化推進室」の立ち上げ準備を急ピッチで進めている。折しも「まち・ひと・しごと創生法案」など地方創生関連法案が衆院で審議入りしたばかりである。
同法人金融インダストリーグループ パートナーの木村充男氏は、「時期が重なったのはたまたまです。当法人では従前から設立の準備を進めていました。もちろん、政府の『まち・ひと・しごと創生本部』が設置されたこともあり、民間の立場から、地域活性化を支援していきたいと考えています」と話す。
木村氏によれば、「トーマツ金融活性化推進室」は、会計、税務、コンサルタントなど、多くの機能(ファンクション)と全国をカバーする拠点を持つトーマツの特長を活用し、幅広い問題解決力を提供するのが狙いだという。具体的には、有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ コンサルティング、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー、税理士法人トーマツなどトーマツグループの各ファンクションおよび全国の拠点の知見を集約し、地域金融機関などのサポートを通じて、地域経済の活性化を目指す。
特筆すべきは、同推進室の設立の趣旨に「地域金融機関のサポート」が明示されている点だ。その理由を木村氏は次のように説明する。「地域経済を活性化させるためには、各地域で産業を育てることが重要です。そのためには、ベンチャー企業や中堅中小企業などに対してリスクマネーが流れる仕組みが不可欠です」。
かつては、地域の地方銀行や信用金庫、信用組合などがその役割を担っていた。だが、金融庁が7月に発表した「金融モニタリングレポート」に記されているように、最近の地域銀行はむしろ、信用力の懸念が相対的に小さく融資審査にコストがかからない貸出にシフトしている。「融資審査にあたって、借手企業の過去の財務諸表や担保に依存する傾向があるのも課題」と木村氏は指摘する。
地方活性化のためには、
産業を生み出す若手経営者の育成が重要
地方創生関連2法案の審議の場で安倍晋三首相は、「ばらまき型の投資は断じて行わない」と強調した。
では、ばらまきではない投資とはどのようなものなのだろうか。有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ パートナーの森川祐亨氏は「大切なのは『人』です。仕事をつくるのは人にほかならないからです」と話す。
森川氏が力強くそう語るのには理由がある。トーマツは東日本大震災の復興支援に主体的に取り組んでいるのである。被災3県(岩手県・宮城県・福島県)すべてに事務所を有するトーマツに与えられた社会的使命であるという考えのもと、トーマツグループ各社から専任・準選任をあわせ30名の各分野の専門家を集めた「復興支援室」が組織されている。同支援室では、被災企業に対する復興・再生支援のほか、起業家・ベンチャー支援、自治体の復興・民営化支援、プロボノ(社会貢献)的支援などを行っている。
起業家・ベンチャー支援もいくつかの取り組みが進んでいるが、その一つ「東北未来創造イニシアティブ」が運営する「人材育成道場」にもトーマツグループの「復興支援室」が参画している。ここでは、気仙沼・釜石・大船渡において、「個別伴走型メンタリング(支援)」により、地域を創造する塾生の事業構想の具現化を全面的にサポートしているほか、卒業後も、事業構想の実現に向けて、継続したフォローを行っている。
森川氏は「私自身がメンター(知識や経験の豊かな支援者)として復興支援に携わる中で、あらためて、人の持つ可能性を感じました。いいモノをつくっても、人と人のつながりがなければ売れません。産業を生み育てるためには、あくまでも人に注力すべきです」と話す。
復興支援を通じて、日本の地域が抱える課題も見えてきたようだ。「被災地における震災後の人口減少や経済圏縮小という現象は、そのまま日本の他の地域が将来直面する課題を映し出していると言えます。いまから始めないと、手遅れになりかねません」(森川氏)。