東海地方の人にとっては、子どもの頃から慣れ親しんだ味であり、学校帰りに友人と食べた思い出や、家族で買い物に行った時に立ち寄った記憶と結びついている。数あるラーメンチェーンのひとつというよりは、地域の生活文化の一部になっているのである。
しかし、その強さが関東でも通用するとは限らない。スガキヤは過去にも関東への進出を試みてきたが、2006年に高田馬場店を閉店したのを最後に撤退している。
当時の関東店舗では、スガキヤの定番ラーメンだけでなく、味噌カツなどの名古屋めしを取り入れたり、関東向けの醤油ラーメンを販売したりと、さまざまな試みが行われていた。
地域の嗜好に合わせて商品を開発すること自体は、外食チェーンにとって決して間違った戦略ではないが、結果的にスガキヤというブランドが何を強みとしているのか、やや見えにくくなってしまった面があったのではないか。
名古屋のソウルフードとしての個性を押し出すのか。それとも、関東のラーメンチェーンと同じ土俵で戦うのか。その中間に立ってしまうと、競争相手との差別化は難しくなる。首都圏には「日高屋」をはじめとする低価格の中華チェーンがあり、ラーメン専門店も数多い。醤油ラーメンや定食を充実させるだけでは、こうした既存勢力と正面から競争することになる。
今回の再進出は何が違うのか
スガキヤの最大の武器は、ほかのチェーンにはない独特の和風豚骨ラーメンと、甘味を組み合わせた業態そのものにある。今回は、その原点をどう首都圏で展開するかが問われることになる。
今回の再進出で興味深いのは、最初の出店先が東京都内ではなく、神奈川県の長津田と本厚木であることだ。東京の繁華街や主要駅前ではなく、郊外の商業施設と駅直結の商業施設を選んだ点に、今回の戦略が表れているように思う。
特に長津田の出店は、スガキヤにとって相性の良い立地といえる。
スガキヤはもともと、ショッピングセンターやフードコートを主戦場として成長してきたチェーンだ。買い物途中の家族連れ、学生、シニア層など、幅広い客層が利用する場所で、手頃な価格のラーメンと甘味を提供する。このビジネスモデルは、スガキヤが長年培ってきた得意分野である。
一方、首都圏の駅前で低価格ラーメンを販売しようとすれば、日高屋などの強力なライバルが待ち構えている。日高屋はラーメンだけでなく、餃子、チャーハン、定食、アルコール類まで幅広く提供し、昼食から夕食、ちょい飲みまで多様な需要を取り込んでいる。そこにスガキヤが同じような価格帯で進出しても、競争は厳しいだろう。
しかし、郊外のフードコートであれば事情が異なる。買い物客がその日の気分で飲食店を選ぶため、スガキヤの独特なラーメンや甘味が選択肢に入りやすい。


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