『スマホ時代の哲学』などの著書で知られる哲学者・谷川嘉浩氏は、現代を「答えのない時代」ではなく「迷いのない時代」だと語ります。
本対談は、谷川氏の最新著書『迷子になった「社会人」のための哲学の時間』の刊行を記念して行われました。「本屋大賞」の立ち上げにも参画した嶋浩一郎氏との対談を通して、ビジネスパーソンが今、哲学を学ぶ意味を考えます。
「陽気なロボット」ではいられない私たち
谷川:最初に、少し大きな時代の枠組みについて話をさせてください。
近代以降、「自由な個人」という存在が理念として掲げられ、時にそれは批判すらされていたものの、実際の社会では様々な抑圧や拘束が働いている時代が長かった。障害者や女性の権利という点でそれは明白です。加えて、企業を含めて組織に所属する「社会人」は、一度そこに入ってしまうと、集団の一部として規範や目的に溶け込むことを求められた。
これに関連して、チャールズ・ライト・ミルズという社会学者が、「陽気なロボット」という表現を使って説明しています。社会の歯車として働くこと、つまり業務に楽しく適応してロボットにさえなれば、社会や世界にとって正しいかという疑問を持たずに、ある種「陽気」に生きることができた。こうしたフレーズが、1950年代の組織論に出てきます。
嶋:そうなんですね。


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