「悪くはないんですよ、悪くは」
そう言って笑ったのは、大手メーカーに勤める52歳の男性でした。仮に、佐々木さんとしておきます。
新卒で入社して30年。地方勤務も、赤字部門の立て直しも経験しました。人望もある。部下からの評価も悪くない。ただ、同期入社の中で、部長職に就いていないのは彼を含めてあと数人になっていました。
「もう上がないのは、わかってるんです。それは仕方ない。でも、日曜の夕方になると、なんというか……体が重くなるんですよ」
「このまま定年まで行くんだろうな、と思うと、自分の人生ってこの程度だったのかな、と」
佐々木さんのような相談は、この5年で明らかに増えました。
野村総合研究所が2025年1月、正社員として働く40〜59歳の男女2060人に行った調査では、「ミッドライフクライシス(中年の危機)」の自覚がある人の割合は、40代で52.1%、50代で53.9%にのぼりました。30代では29.7%ですから、40代を境に一気に倍増していることになります。
つまり、佐々木さんは特異な人ではありません。同世代の半数以上が、同じ場所に立っています。
「能力が足りなかった」は、たいてい誤診である
こういう相談を受けたとき、多くの方が3つの結論のどれかに自分を落とし込もうとします。
1つ目は「自分は能力が足りなかった」。 2つ目は「会社の評価がおかしい」。 3つ目は「もう年齢的に手遅れだ」。
私は、この3つはいずれも誤診だと考えています。
なぜなら、佐々木さんは30年間、任された仕事をやり切ってきた人だからです。実務能力(私はこれを「自己効力感=できるという感覚」と呼んでいます)も、やり抜く力(「自己信頼感」)も、むしろ人並み以上に育っています。
足りていないのは、能力ではありません。まったく別のものです。


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