私は自己肯定感を、6つの感覚が支える1本の木としてとらえています。
土壌が「安心感」。根が「自尊感情(自分には価値があるという感覚)」。幹が「自己受容感(ありのままの自分を認める感覚)」。枝が「自己効力感(自分にはできるという感覚)」。葉が「自己信頼感(自分を信じられる感覚)」。
そして花が「自己決定感」──自分の人生を自分で決められる感覚です。
最後に実が「自己有用感(誰かの役に立てている感覚)」となります。
この木の比喩でいうと、佐々木さんは「幹も枝も葉も立派に育っているのに、花だけが一度も咲いていない大木」でした。
20年以上、自分で決めた記憶がない
カウンセリングの中で、私はこう尋ねました。
「この30年で、ご自分で決めたことって、何がありますか」
佐々木さんはしばらく黙ったあと、こう言いました。
「……ないですね。配属も、異動も、転勤も、担当替えも、全部、上が決めてきました」
これが、本当の原因です。
会社員という働き方は、そもそも自己決定の機会が構造的に少ない。どこに住むか、何を担当するか、誰と働くか──人生の相当部分を、組織が決めてくれます。それは若いうちは「守られている」ことでもあります。
ところが、決めた回数が20年、30年と少ないままだと、「自分の人生を生きた」という手応えだけが、まったく蓄積されないのです。
景色はたくさん見てきた。距離も進んだ。それなのに「どこにも行っていない気がする」。それは、一度もハンドルを握った記憶がないからです。


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