これは私の実感だけの話ではありません。
神戸大学の西村和雄氏と同志社大学の八木匡氏が2018年に発表した、日本人約2万人を対象とした調査があります。所得、学歴、健康、人間関係、自己決定という要素のうち、幸福感にどれが強く影響しているかを分析したものです。
結果は、健康、人間関係に次いで、「自己決定」が3番目。所得や学歴よりも、自己決定のほうが幸福感への影響が大きかったのです。しかも所得の効果は、ある水準を超えると頭打ちになることも示されています。
「自分で決めた」という感覚は、年収や肩書きよりも、人生の満足度を左右する。佐々木さんが感じていた重さの正体は、まさにここにありました。
処方箋は「転職」でも「学び直し」でもない
ここで多くの記事が勧めるのが、転職、資格取得、副業、リスキリングです。
私は、佐々木さんにそれを勧めませんでした。
理由は単純で、決める力が枯れている人に、人生最大級の決断を勧めるのは、走れない人にフルマラソンを勧めるようなものだからです。うまくいかなかったとき、「やっぱり自分はダメだった」という証拠が一つ増えるだけになります。
私が伝えたのは、たった一つでした。
「今日から、1日ひとつ、小さなことを自分で決めてください」
昼食のメニューを、誰にも合わせずに決める。会議で最初に発言する。帰り道をいつもと変える。それだけです。


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