ただし、変化の兆しもあります。ベネッセ教育総合研究所と東京大学社会科学研究所が行っている「子どもの生活と学び」研究プロジェクトの経年調査では、小中学生に比べ、高校生の学習意欲や態度には改善が見られたといいます。
高校で重視されるようになった探究的な学びによって、「学んだことには意味がある」「何の役に立つのかがわかる」と答える生徒が増えたことが背景にあると小村氏は見ています。
つまり、好奇心や学習意欲は、本人の性格だけで決まるものではなく、学校での学び方や、子どもが出会う問いによって変えていけるのです。
15歳の高い学力は、その後どこへ行くのか
ここで、もう一つの疑問が浮かびます。日本の15歳は四半世紀にわたって世界トップレベルの力を示してきたのに、なぜ、日本の社会人は世界一学ばないといわれるのか。そして、その力が大学の研究力や企業の競争力につながっていないのでしょうか。
もちろん、15歳時点の学力と、大学の研究力や企業の競争力を単純に結びつけることはできません。PISAの結果だけで、その因果関係を説明することもできません。それでも、高い力を持った「金の卵」たちが、その後さらに才能を伸ばし、活躍できる環境を、私たち大人はつくってきたのかという小村氏の問いは重く響きます。
「これまで私たちは、教育ではなく、選抜をしてきただけではないかと反省する必要があります。本来の教育は、入ってきた子どもや学生をどう育て、どう伸ばすかです。目の前の競争に勝つためではなく、『将来この分野で活躍したい』『これを自分のライフワークにしたい』という内的な動機を持てる学びに転換するチャンスです」(小村氏)
これまでの日本の学びは、中学校では高校入試のため、高校では大学入試のためというように、次の選抜を通過することが大きな目的になりがちでした。
しかし、少子化が進み、かつてほど激しい選抜が機能しなくなりつつあるいま、教育の目的そのものを問い直す時期に来ているのです。
続いてPISA2025では、日本の子どもの生活満足度が、OECD平均と同水準になりました。
15年には平均と大きな乖離があったことを考えると、前向きな変化です。
詳細を見ていくと。学校への所属感や、「先生が助けてくれる」という感覚、安全面に関する評価も高く、日本の学校が、子どもたちにとって安心して過ごせる居場所になっていることがうかがえます。
実際、日本の学校は、教科の学習だけでなく、生活指導、進路指導、部活動、心のケアまで、多くの役割を担ってきました。その結果として、高い学力や学校への安心感が築かれたことは、正当に評価すべきでしょう。


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