一方で、家庭による支援的関わり方の頻度は、OECD平均を下回っています。小村氏は、この結果について次のように指摘します。
「日本は学校への期待と信頼が高い一方、学校の頑張りに依存する度合いも高い。家庭の教育への関与が低下する中で、学校がすべてを担う仕組みは持続可能なのかを考える必要がある」
学校への依存が強い社会では、学校に通いにくい子どもが学びや支援から取り残される危険もあります。
PISAは学校を基盤とした抽出調査であり、日本では通信制高校が調査対象に含まれていません。また、対象校に在籍していても、調査当日に欠席した生徒は結果に反映されません。
そのため、学校に継続的に通えていない子どもの実態が、調査結果に十分表れているとは限りません。
国際比較のためのサンプリングとしては、OECDの基準を満たしており、結果の有効性が損なわれるわけではありません。しかし、通信制高校で学ぶ生徒や不登校の子どもが増えている今、PISAの結果だけを「日本の15歳全体の姿」と受け取ることには慎重であるべきです。
学校をよりよくすると同時に、学校に行けなくても学べる機会を保障する。どちらか一方ではなく、両方を進めることが求められているのです。
世界トップの学力を、子どもたちの未来につなげるために
PISA2025が示した世界トップレベルの学力は、日本の学校教育が長い時間をかけて築いてきた大きな財産です。一方で、その力を子ども自身の好奇心や、自ら学び続ける力につなげられているのかという課題も残りました。
今後、学校には、子ども一人ひとりに同じものを与えるだけでなく、その学びが本人に届いたのか、理解や成長につながったのかという「学習者の側」から教育を捉え直すことが求められます。
次期学習指導要領に向けた議論でも、子どもの課題や特性に応じて教育課程を柔軟に編成する「調整授業時数制度」の創設や、学習の自己調整を支える指導の充実が検討されています。制度を設けるだけでなく、それぞれの学校で子どもの学ぶ意欲を支える実践へとつなげられるかが問われます。
同時に、学校にすべてを任せるのではなく、家庭では子どもと本音で対話し、地域や企業は子どもが多様な大人や社会の課題に出会う機会をつくる必要があります。
これから必要なのは、国際順位をさらに上げるためだけの教育ではありません。子どもたちの好奇心を育み、失敗を恐れず挑戦できる環境を整えることです。
15歳時点でどれだけ高い得点を取れたかだけで、その後の人生が決まるわけではありません。それよりも、自分で問いを持ち、学ぶ方向を選び、学び続けられる力を育てること。その力があってこそ、世界トップレベルの学力を、子ども自身の幸福や社会の新しい価値へとつなげることができるのではないでしょうか。
PISA2025の結果は、日本の教育の到達点を示すと同時に、私たち大人に「その先」をどうつくるのかと問いかけています。


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