「西日本でお気に入りのローカル線は?」と聞かれれば、筆者は真っ先に「肥薩線」の名を挙げる。
肥薩線は2020年7月の豪雨で大きな被害を受け、とくに八代―人吉間の球磨川に架かる橋梁は数カ所で流され、今も列車は走っていない。一時はこのまま廃線かともささやかれたが、2033年度ごろの運行再開を目指して復旧に向けた動きが進んでいる。
だが、人吉―吉松間についてはまだ方針が決まっていない。この区間には“日本三大車窓”のひとつ「矢岳越え」やループ線とスイッチバックで有名な大畑駅などがあり、観光要素の色濃い区間だ。この区間こそ筆者が足しげく通った場所であった。
今回は復興への願いも込めて、肥薩線について取り上げたい。
かつては「本線」だったローカル線
肥薩線は鹿児島本線の八代から分岐して球磨川沿いに内陸部を進み、城下町の人吉を経由して険しい峠を越え、隼人で日豊本線に合流する124.2kmのローカル線だ。1909年に全線が開通した。
当時はこの路線が鹿児島までのメインルートである「鹿児島本線」で、後に海岸沿いのルートが開通するまでは九州を縦断する幹線としての役割を果たしていた。新線開通後は鹿児島本線の名を新ルートに譲り、人吉経由の旧ルートは肥薩線に改称。さらに1932年、隼人―鹿児島間が日豊本線に編入され、現在の八代―隼人間となった。

