2025年夏(6〜8月)の日本の平均気温は、平年値(1991〜2020年の平均)を2.36℃上回った。1898年に統計を始めて以来、最も高い記録である。
しかも、記録更新は3年連続だ。23年、24年の従来記録であるプラス1.76℃を、25年はさらに0.6℃上回った。8月5日には、群馬県伊勢崎市で国内最高となる41.8℃を観測している。もはや「酷暑」だけでは、この暑さの危険性を伝えきれない。
問題は、これが単なる「暑い夏」の話ではないことだ。
酷暑は農地で農作物を傷める。畜舎で家畜の体調を崩す。収穫後は輸送・保管中の鮮度を奪う。そして最後に、品不足や値上がりという形で、家庭の食卓に届く。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書では、温室効果ガスの排出削減が十分に進まない場合、40〜50年代に世界の平均気温が産業革命前よりプラス2℃に達する可能性が示されている。25年の夏は、その未来の「予告編」ではない。すでに始まった現実と言える。
本稿は、筆者が食品企業の原料調達や新規事業開発の支援に携わるなかで、産地・メーカー・流通の現場から得てきた知見を、消費者の視点で整理したものである。企業の調達戦略の議論と、家庭の冷蔵庫の中で起きている変化は、実は同じ一本の線でつながっている。
酷暑は、農地と畜舎から供給を減らす
象徴的な例が、23年の「エッグショック」である。
当時は鳥インフルエンザによる供給不足が注目された。しかし、供給回復の局面で、もう一つの問題が重なった。猛暑による家畜の「夏バテ」である。鶏、牛、豚は、体温を一定に保つ恒温動物だ。高温多湿の環境が続くと、体温調節が追いつかない。餌を食べる量が減り、卵や乳、肉の生産性も落ちる。


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