メディア業界ではここ約30年の間に、かつて主流だった紙からオンライン(Web)、そしてスマートフォン(アプリ)へとメインの媒体が移り変わってきた。さらに今、「生成AI時代」を迎え、これまで以上に大きな変革にさらされている。
こうしたパラダイムシフトの中、先んじて自己変革に挑戦する米メディアの動向を通じて、これからの時代を生き抜くための戦略的要件を探る。前提として、米メディアを「レガシーメディア群」「新興メディア群」「非営利メディア群」に大別した(表)。今回はレガシーメディア群と新興メディア群に焦点を当てる。

レガシーメディアはペイウォールを徹底
まず、新聞など伝統的なレガシーメディア群では「紙離れ」が進んだ結果、デジタル変革の成否による優勝劣敗がすでに明瞭だ。
日本のような強力な新聞販売店網がないアメリカでは、特に地域に根差した潤沢な広告収入が経営を支えてきた。だが、デジタル広告の発展でその経営基盤が急激に掘り崩されてしまった。ワシントン・ポストやロサンゼルス・タイムズなど、世界的に知られる老舗の名門紙でさえ経営難に陥り、大規模なリストラに追い込まれている。
しかしその一方で、ニューヨーク・タイムズ(NYT)、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、ブルームバーグ・メディア(BM)など、デジタル購読モデルを確立し、成長を堅持しているところもある。
NYTは2014年、デジタルファースト宣言とも言うべき「イノベーションリポート」を発表。報道、非報道の区別なく、コンテンツ、マーケティング(読者開発)、テクノロジー投資など全分野で組織や文化の刷新に動いた。そして、外部プラットフォームへのトラフィック依存は避け、自社ドメインでの課金に邁進してきた。
武器はデジタル時代にフィットした表現力あるコンテンツのほか、デジタル版、特にアプリの開発能力やデータ分析、読者開発の力だ。こうした領域を担う非コンテンツ組織の拡充に努めてきたことが寄与し、購読者数を約1300万人にまで伸ばした。
もっとも、ニュース単体での成長は踊り場を迎えている。そこでNYTは、非ニュース分野のゲーム、料理、スポーツ、商品レビューなどを、買収も交えて強化している。それらをバンドル(全部入りパッケージ)化して購読者当たりの売り上げを高め、購読者のLTV(生涯価値)を最大化する戦略へと移行している。今後は有望株のポッドキャストに加え、動画を次なる成長ドライバーに据える構えだ。
WSJもまた、経済メディアとしての圧倒的なブランドと、日本を含む世界に構築してきた報道網をテコに、購読者基盤を固めてきている。重厚な調査報道スタイルに加え、イラストや動画を統合したビジュアル解説、記事をリアルタイムで更新するライブブログなど、現代的な報道フォーマットを強化。「機敏でテーマ主導型の組織構造」へのトランスフォーメーションを進めている。
BMは、祖業である投資家向け端末ビジネスへの依存を避けるため、Webメディアを10年ほど前から本格化。テキストのみならず、動画や音声などマルチフォーマットを前提とした高級ビジネスメディアとしてのポジションを確立した。
成功しているレガシーメディアの勝因は、以下の3点に集約される。
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