理由は完全には解明されていなくても、市場は確実に動いている。楽天市場の過去3年間の購買データでは、6〜7月の麺類全体の流通総額は年間平均の約1.5倍まで伸長。その中でも、「辛麺」は前年同期比約2.5倍、「酸辣湯麺」は約1.8倍と大きく伸びている。
つまり夏に伸びているのは、冷たい麺だけではない。「辛い麺」なのである。楽天はこれを「辛・酸・冷」の要素を持つ夏グルメへの需要拡大と分析している。
こうした流れはラーメンチェーンの商品構成にも表れている。「中国ラーメン 揚州商人」の夏メニューは、
・大肉(タイルー)のあっさり激辛ラーメン
・冷しタンタン麺
という3本柱だ。
興味深いのは、看板商品がすべて「辛さ」を軸にしていることだ。夏メニューというと冷やし中華や冷製麺をイメージしがちだが、揚州商人は「辛い」「酸っぱい」「冷たい」という要素を組み合わせ、夏の食欲低下に対応している。
もはや夏の主役は「冷たい麺」だけではない。「旨辛」という選択肢が、完全に市民権を得ていることが分かる。
暑い日でも寒い日でも一定の需要がある麻辣湯
一方で、石神さんが明かした店舗データは興味深いものだった。
「七宝麻辣湯では、夏だから売り上げが落ちる、冬だから伸びるということがほとんどありません。春夏秋冬、売り上げはあまり変わらないんです」
これは飲食業界では珍しい。ラーメン店は一般的に夏場に売り上げが落ち込み、鍋料理店は冬に売り上げが集中する。
しかし麻辣湯は、暑い日でも寒い日でも一定の需要があるという。
石神さん自身も真夏に火鍋を食べに行くほどの辛いもの好きだというが、それ以上に市場全体を見ても、麻辣湯は季節性をほとんど感じない料理だという。
つまり、「夏だから辛いものが売れる」というよりも、「辛いものが好きな人は季節を問わず食べている」という側面もあるのだ。

