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今回登場するのは、杉山大樹さん(32)。愛知県立一宮高校を経て東京大学に進み、在学中は漫才サークル「笑論法」を立ち上げ、東大発オンラインメディア「UmeeT」の初代編集長を務めた。新卒フリーランスとして、NHKの東京オリンピック若者向け広報サイトの立ち上げにも関わった。24歳までは、絵に描いたような「できる側」の若者だった。
その彼が、2017年12月11日の夜、自転車で単独転倒し、意識不明となる。目覚めたときには、ひらがなが読めなくなっていた。
彼が7年かけて、そこからどう戻ってきたのかを聞いた。
漢字に憑りつかれた保育園児
杉山さんは、愛知県一宮市に生まれ育った。
父は製造業の会社に叩き上げで勤め、赤字事業部を立て直し人事部長も経験して、今は子会社の社長を任されている。キャリアコンサルタントとキャリアカウンセラーの資格を持ち、本を読み続ける勉強家である。
母は教師で、字がとても綺麗な人だった。杉山家の食卓は、「スーパーの安売り時間を把握して食事を確保する」という、明るくケチな合理主義に貫かれていた。
彼は、保育園のころから漢字が好きだった。
親に朝刊を買ってもらい、朝の食卓に広げる。紙面を眺めては、記事の中に出てくる漢字を「偏」ごとに分類し、リストを作っていた。木偏、氵(さんずい)、月偏、言偏――。ひらがなを覚えたばかりの子どもがふつうやることではない。他の保育園児がキャラクターの塗り絵にペンを走らせている時間に、彼は新聞を辞書代わりに、自分だけの漢字図鑑を編んでいた。

