NHKの東京オリンピック若者向け広報サイト「ワガモノ2020」の立ち上げの仕事も舞い込む。「これで安心して卒業できるぞ」と、彼は思った。
大怪我が待っていたのは、休学を終了する手続きをした直後の冬だった。
自転車で転倒→大怪我を負う
2017年12月11日の夜、東大近くの根津交差点。急な下り坂の直後に急な上り坂がある言問通りを、杉山さんは自転車で猛スピードで下っていた。
理由は、ケチだったからだと本人は述懐する。
「僕のケチさは『お金を使うのが勿体無い』では留まらず、『運動エネルギーが勿体無い』と思ってしまうレベルなので。『急な下り坂の直後に急な上り坂があるなら、降る前に停止しておいて、信号が青になったタイミングで高速で坂を下り、その運動エネルギーを登りに活用して登り切るべし!』と本気で思っていました」
人生数万回目かの下り坂チャレンジの途中で、何が起きたのかは分からない。彼はソロで転倒し、通りすがりの農学部の学生や東大ラクロス部の人たちが救急車を呼んでくれた。東大近くの日本医科大学付属病院に運ばれ、緊急手術。
診断名は容赦なかった。「左側側頭部打撲」「左側硬膜外血腫」「急性硬膜下血腫」「右側側頭葉脳挫傷」「外傷性くも膜下血腫」「脳挫傷」「意識障害」「右側片麻痺」。頭蓋骨を開く「開頭血腫除去術」が行われた。
意識レベルは低かった。
医師は両親に告げた。「後遺症が残るかもしれず、東大に行っていた時の能力は戻らない。言葉を取り戻せないかもしれないし、立てないかもしれない。それどころか自発呼吸もままならない可能性がある」
一命は取り留めた。しかし彼は、意識不明のまま2週間目を覚まさなかった。

