医療機器メーカーで営業をしているD氏(男性・33歳)が、カウンセリングに現れた。ある朝、猛烈な腹痛とともにトイレに駆け込んだ彼は、目を疑った。便器が真っ赤に染まっていた。
「病院を受診したところ、虚血性大腸炎という診断でした。ストレスが原因だろうと言われました」
さいわい、その後下血は治まった。原因は働き方にあることに薄々気づいていたものの、「自分でもどうしたらいいかわからなくて……」と、筆者の元に相談に来たという。
君しかいない。課長の代わりに…
聞けば、これまで上司だった課長が別の部署に異動し、課長の席が空いた。しかし、人員がいないとのことで課長は空席のまま。上司がいないというだけでも困惑するのに、部長からは「君しかいない。課長の代わりに動いてほしい」などと懇願されたという。
少し前にマネジメント研修は受けているものの、基礎をほんの少し教わっただけ。管理職になったわけでもなく、立場はこれまでと変わらない。それなのにプレーヤーとして働きながら、同僚たちの仕事のとりまとめもしなければならない。
予算関連の資料の作成なども頼まれていて、時間がいくらあっても足りず、土日も家で作業をするようになった。給与は変わらないままだ。
仕事量の問題だけではない。職場の人間関係も少しずつゆがみ始めた。
「同僚に指示することが増えてからは、仲の良い同期もよそよそしくなりました。部内の先輩社員に注意しなければいけない場面もあり、胃が痛い毎日です」とD氏。「管理職でもないのになんでこんなことをしなきゃいけないんだって、つらくて仕方ない。家でも、2歳の子どもにイラっとして怒ってしまうこともあって、自己嫌悪に陥っています」と打ち明けた。

