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「給料も上げた。残業も減らした。人間関係も悪くない。それなのに、なぜ辞めるのか」。優秀な若手から突然退職を告げられ、戸惑う経営者は少なくありません。
多くの会社が「働き方改革」の名のもと、残業削減やハラスメント防止、職場環境の改善に取り組んできました。それでもなお、若手が静かに去っていく会社が増えています。
その背景にあるのが、「ゆるブラック企業」、あるいは「パープル企業」と呼ばれる職場の問題です。残業もハラスメントもない。人間関係も悪くない。しかし、成長実感がなく、収入が上がる未来も見えない。こうした職場に対して、「働きたくない」と答えた人は約7割にのぼり、その理由の第1位は、給与でも人間関係でもなく「成長できない」ことでした。(株式会社AlbaLink:2023年「ゆるブラック企業に関する意識調査」)
もはや、職場が「ホワイトか、ブラックか」だけを問われる時代は終わりました。これから問われるのは、その会社に「成長できる設計」があるかどうかです。
本稿では、『社長が3ヶ月不在でも成長する会社の作り方』の著者である安東邦彦氏が、ある食品専門商社で実際に起きた事例をもとに、“優しい職場”がなぜ最も優秀な若手を失うのか。そして、「働きやすさ」を「働きがい」へ変えられる会社は何が違うのかを読み解いていきます。
「全部良かったです」退職を告げた朝の社長室
ある月曜の朝のことです。東京・神田に本社を構える、創業40年の食品専門商社C社(社員約60名・仮名)。入社5年目のAさん(仮名・27歳)が、一通の封筒を手に、社長室のドアをノックしました。

