――なぜ反省をされるに至ったのですか。
探究学習をした卒業生へのインタビュー調査がきっかけです。全国大会で活躍した卒業生に「優勝してどうだった?」と尋ねたところ、「先生が赤ペンを入れてくれたとおりに話せばうまくいくことを覚えています。今も仕事は暗記します」と言われました。主体的な学びを支援したつもりが、実際には「先生の言うことを聞くこと」を学ばせていたのです。本来なら生徒自身が試行錯誤する中で力が身に付くはずなのに、その過程を奪ってしまっていたのです。
社会に出てから求められるのは、自分で課題を見つけて行動できる力です。その卒業生は引きこもりになった時期があり、私は自分のやり方は間違っていた、寄り添う対話ができていなかったと強烈に反省し、教師を辞めようとも思いました。
カギは「問い返し」、宇宙サバ缶が「自分事」に
――そこからどのように「宇宙サバ缶」の実現へとつながっていったのでしょうか。
宇宙サバ缶の研究は高校の統廃合問題もあって一時期停滞したのですが、若狭高校に統合後、宇宙サバ缶プロジェクトを復活させたいと生徒から声が上がったのです。アマモの件の猛省から、この声を本当に大事にしなければいけないと思いました。それは生徒中心の探究活動ができるかという自分自身への挑戦でもあり、生徒から出てきた言葉を大切にし、そこから探究を広げていくことを意識しました。
――生徒たちとの対話で意識してきたことを教えてください。
「もう少し具体的に教えて」「そうじゃなかったら、どうなる?」などと問い返すことです。教師が常に先回りして答えを持つ必要はありません。問いを重ねることで、生徒たち自身が考えを深め、自分事として探究できるようになります。
――この取り組みが14年間も続いた理由は何でしょうか。
毎年、課題設定が違っていたことが大きいと思います。粘り気、味の改良、パッケージなど、代ごとに新たな課題を設定し、自分の興味とその課題をつなげて解決策を模索していました。
探究とは、自分と社会をつなげることです。ドラマ放映後、卒業生たちが口々に「なんで自分が主役じゃないの?」と言いましたが、それほど宇宙サバ缶は1人ひとりにとって「自分事」になっていました。

