この「幸せ」というワードは、地元の人たちだけでなく、従業員にも及んでいる。塩パンは先述のように、よく大量まとめ買いをされる人気の品だが、手を抜くことは許さない。客の幸せのため、「日本で一番売れているパンを作っているという気持ちを絶対に忘れるな」と従業員に発破をかける。「その多忙の対価として売上は上がっているのだから」と、従業員にも還元する。モチベーションを上げるためだけではない。「頑張った」「美味しいパンをたくさん作った」従業員に、給料やボーナスという形で「幸せ」を感じてもらうためだ。
やり甲斐面でも給料面でも「幸せ」を感じている従業員
パン・メゾンでは、離職率がおそろしく低いのだという。高校生時代からバイトをしていた従業員が、店長になっている店舗もある。今、若者の離職率の高さが問題になっているが、やり甲斐面でも給料面でも「幸せ」を感じられたら、その問題も解決するのかもしれない。将武さんが守ろうとしているのは、客にも従業員にも「幸せ」を感じてもらえる「パン屋さん」なのだ。
現在パン・メゾンは、八幡浜本店、松前店のほか、東京のすみだ浅草通り、銀座、新宿にも店舗を構えている。東京を任されているのは、将武さんの弟。元は大企業に務めていたが、「焼き立ての、元祖塩パンを、東京の人にも食べてもらいたい。幸せを感じてもらいたい」という弟さんの想いを受け、東京進出が決まった。
「お客さまに幸せを感じてもらえるというのは、作っている側もやっぱり楽しいことなんですよね。楽しみながら、かかわったすべての皆さんに幸せになってもらう……それが結局、自分に返ってくる。これからもその精神で、美味しいパンを焼き続けられたらと思います」
