筆者は過去に一度、在スペイン日本大使館の食のイベントで、洋花さんを遠目に見たことがある。コツコツと鳴るヒール、ピンクの髪――だが一番印象に残ったのは、マグロの業者に対し率先して、専門的な質問を重ねる姿だった。血抜きの方法について。身の色の変化について。本質を突く問いを、物怖じせず投げていた。
「わからないことほど興味が湧く」――あの秋田の中学生のままだ。
ただし、違いがある。教師に「やめてくれ」と言われた少女は、今、問いを歓迎される場所にいる。業界の重鎮たちが、彼女の問いに背中を押してくれる。
どこに行ったらいいのか、わからなかった女性が、今
現在、洋花さんは、10年来の夢だった日本酒ペアリングを本格的に始めようとしている。
マドリードにある星付きレストランで20年の経験を持つ日本人のソムリエとともに、料理と日本酒のマリアージュを組み立てている。
これは、夢の実現というだけではなく経営者としての、次の挑戦である。
2店舗目のヨカロカ・マトゥテ店は、市場店より単価の高い客層に向けた店だ。観察を重ねてきた洋花さんは、その客層に何を届けるべきかを考えている。出した答えのひとつが、日本酒ペアリングだった。
海外に出てからの経験をきっかけに、洋花さんは日本人としてのアイデンティティーを強く意識するようになった。スペインの食材を、日本人の感性と技術でどう表現するか。その答えを日本酒の造り手たちとともに探り、価値を伝えていくことに、いまは喜びを感じているという。
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【「答えは外じゃなくて内にある」】
