教員の「複業」、メリット多くても困難な特殊事情!に風穴を開けるには 許可されやすい兼業、許可されにくい兼業とは

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独立行政法人労働政策研究・研修機構が2023年に行った調査によれば、仕事をしている人のうち副業をしている人の割合は6.0%だった。現在、キャリア形成の1つの手段としても見直されている副業だが、教員の副業というとまだまだハードルが高いように感じるかもしれない。そんな中、元中学校教員の前田央昭氏は、教育関連企業に勤めながらNPO 法人越境先生(認証作業中)を設立し代表理事として教員の複業の研究・啓蒙を行っている。ここでは、教員の「複業・兼業」の実際について、前田央昭著『先生が複業について知りたくなったら読む本』から一部抜粋、再構成してお届けする。

教員の「複業」の可能性

私は2013年に神戸市の中学校に理科教員として採用され、8年(育休の期間を含む)ほど在籍していました。その後、正規の教員を退職した私は、非常勤講師として小学校で週に10時間ほど勤務し、残りの時間は個人事業主として開業し、自分にどんなことができるのかを模索する時間に充てました。

本当に自分がやりたいことは何か、徹底的に自分を見つめ直し、残ったのが「教員の複業」でした。私は、教師の仕事が好きでした。生徒たちの自律のための伴走をすることが好きで、そのために自分も社会に打って出て経験を蓄積させたいと思っていました。

そこで、稼げるかどうかは度外視して、「教員の複業」を前に進めることに振り切ることを決めました。まずは教員の複業に関するコミュニティを立ち上げることにしました。

教員の複業についての情報発信を行う中で、学校内での兼業申請の出し方や全国の事例などについて相当な量の情報収集と研究を行いました。その中で、本気で誰かが動かなければ教員の複業はこのまま前に進まないかもしれないと感じ、地方自治体や社会と対等に議論していくためにNPO法人を立ち上げることにしました。

ここでは、外界に関心のある先生方に勇気と正しい知識をもっていただけるよう教員の複業を取り巻く制度と現状を紹介します。

なお、教員が一人の人間として学校以外にも様々な側面をもち、教育活動にあたってほしいという意図を込め「複業」という言葉を用いています。一般的な「兼業」や「副業」の意味を内包しています。ただし、法律や規程に関する表記の際には「兼業」をそのまま用いています。

教員の複業の制度と現状

2024年現在、教員の複業は完全に禁止されているわけではありません。すでに実践している方もいますし、許可申請にそれなりの難しさはあるものの、一部の教育委員会においては兼業規定も存在します。

教員の複業に関わる法律や制度は、大きく以下のとおりです。

・地方公務員法

・教育公務員特例法

・各自治体の就業規則など

・総務省のガイドライン

 

この他、過去の事例や判例なども指針の一つになると思われます。

例えば、地方公務員法には、複業に関して①営利企業等の従事制限、②信用失墜行為の禁止、③守秘義務、④職務専念義務の項目があります。

①は、地方公務員法第38条にこう示されています。地方公務員は、任命権者の許可がなければ、報酬を得て行う継続的な仕事を兼ねることができません。自ら興すもの、法人などから依頼されるもの、これら全てを含めた報酬を受け取る行為に許可が必要だとされていますので、基本的に全ての複業は許可を得る必要性があるのです(ただし、実費交通費などは報酬にはあたりません。また、総務省の資料によると単発の講演や原稿執筆などは本来許可を必要としないとされています)。

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