ChatGPTに「お願い」をして仕事を手伝ってもらおう

「ChatGPTと会話をしたことはあるけれど、結局、教師の仕事にどう使えるの?」と思われている方も多いかもしれませんが、ChatGPTはただ会話相手として使用できるだけでなく、幅広い「お願い」を聞いてくれる相棒として使うことができます。

例えば、皆さんは、学習指導要領などのPDFファイルをコピー&ペーストしたときに、不要な空白や改行が入ってしまった経験はありませんか。そんなとき、ChatGPTにお願いをすれば、きれいに整えて出力してくれます。

コピペした文章を整えてくれるChatGPT

上記はあくまでも一例ですが、このようなちょっと面倒な作業は、私たちの代わりにChatGPTがしてくれます。

また、教師の仕事でChatGPTが活用できる場面はたくさんあります。以下は、拙著『ChatGPT×教師の仕事』でも紹介している活用例の一部です。

教師の仕事でChatGPTが使える場面

このように思考整理から授業準備、問題作成、そして校務まで幅広い場面でChatGPTを活用することができます。私自身、毎日ChatGPTに「お願い」をして、仕事を助けてもらっています。

「プロンプト作成」の工夫、3つの極意

ChatGPTへお願いをするときに、自分が望んでいる出力を得やすくするテクニックがあります。それは、ChatGPTへの指示文「プロンプト」を工夫することです。私がプロンプトを書くときに、つねに意識しているのは、次の3つです。

(1) 一文一文を短く書く

(2) してほしくないことを明確にする

(3) 無茶振りをする

 

同僚に仕事を依頼するときと同じで、できるだけ明確に指示を与えることが大切です。とくに、(1)と(2)を意識することで、「どんな出力を出してほしいのか」を明確に伝えることができます。

(3)については、同僚相手に無茶振りをすると嫌な顔をされるかもしれませんが、AIなら気にする必要はありません。「案を20個提案して」といったように、できるだけ多くのパターンを出力させて、よいものを選ぶという使い方がおすすめです。

一方、便利なChatGPTですが、注意しなければならないことも主に3つあります。

まず1つ目は、「誤った情報を出力するおそれがあること」。ChatGPTは、インターネット上の大量のデータから学習して文章を出力しているので、誤った情報が出力されることもあります。そのため、ChatGPTから得た情報をそのまま使う場合には、情報が本当に正しいのかを確認する必要があります。

また、出力内容に性別などに関する偏見が含まれるおそれもあります。学校現場で出力結果を使用する際には、細心の注意を払って確認をするべきです。

2つ目は、「個人情報は絶対に送信しないようにすること」。ほかのサービスでも同様ですが、インターネット上のサービスには必ず情報漏洩のリスクが伴います。以前には、他者のチャット履歴が見えるようになっていたという事案も起こっており、児童生徒の名前や成績などの個人情報をチャットで送ってしまうということがないようにしなければなりません。

3つ目は、「著作権を侵害しないようにすること」。文部科学省の『初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン』によると、類似性(他人の著作物と似ているか)と依拠性(他人の著作物を基に創作したか)の両方が認められる場合は著作権侵害になりうるとされています。

例えば、「次の歌詞を学校版に書き換えてください。(最新の楽曲の歌詞を入力)」といったプロンプトで、替え歌を出力させてそれをインターネット上に公開すると著作権侵害となりえます。

学校の授業内での使用については、著作権法第35条によって問題ないとされていますが、インターネット上で公開したり、コンテストに提出したりする場合は、著作権者の許諾が必要となります。

Excel作業や授業準備を「劇的に効率化するコツ」2選!

さて、プロンプトの書き方や注意点を確認したところで、もう少し具体的に、私がどのようにChatGPTを活用しているのか、活用例を2つ紹介したいと思います。実際に私が使用したプロンプトも全文掲載しているので、ぜひコピペしてお試しください。

【活用例(1)】Excel作業を効率化

私は、繰り返しのあるExcel作業はChatGPTにマクロのコードを書いてもらって効率化しています。次の動画では、「教師用時間割」から「クラス用時間割」の作成を、ChatGPTが書いたコードで自動化しています。

動画内使用音源:wings over the sky written byのる(https://dova-s.jp/bgm/play19793.html)

これまでは、手作業で教師用の時間割から、クラスごとに1つひとつ授業を探して表を埋めて、最後には読み合わせをして……というふうに進めていました。そんなかなり骨の折れる作業が、マクロを使えば一瞬で終わらせることができます。

今回使用したプロンプトは、次のとおりです。正直、自分が見返しても、とても読みづらいプロンプトですが、「どう操作してほしいのか」をできるだけ詳しく順番に説明することで、ChatGPTはしっかりと理解し、コードへ直してくれます。

【マクロ作成のプロンプト】

エクセルのマクロを書いてほしい。
1:ダイアログで、「時間割のデータが入っている範囲」を指定できるようにする。
例えば、B4からAF61までデータがあればその範囲を指定できるようにする。

2:ダイアログで、「時間割を作成するクラス」を指定できるようにする。
デフォルトで11, 12, 13, 21, 22, 23, 31, 32, 33を入れておく。
3:「実行」を押すと4以下の動作がスタート。
「キャンセル」を押すとダイアログを閉じる。

4:「クラス別時間割」というシートを新しく作成する。
もし、このシートがすでにあれば、数字を追加して別の新しいシートを作成する。
5:ここからは元のシートに戻り、「時間割を作成するクラス」を一つ一つ処理していく。
「時間割を作成するクラス」の1つ目の値を検索する文字列とする。
「時間割のデータが入っている範囲」で左から1列ずつ検索をする。
そして、検索結果の1つ下のセルをコピーする。
これを「クラス別時間割」のシートにペーストしていく。
6:検索範囲の「時間割のデータが入っている範囲」の列が変われば、ペーストする列も1つ右へずらす。
検索対象の「時間割を作成するクラス」が変われば、ペーストする行を1つ下へ行を変える。
7:「時間割を作成するクラス」の最後までこの作業を繰り返す。

 

 

時間割は1年間で何度も改定したり、行事に合わせて特別な時間割を組んだりすることが多々ありますが、ChatGPTに一度マクロを書いてもらうだけで、年間で数時間は仕事時間を短縮することができます。

【活用例(2)】Kahoot!の問題作成を効率化

私は英語科の教員ということもあり、語彙力強化のために学習用のクイズアプリ「Kahoot!」をよく使用します。基本的に無料で使用でき、児童生徒はアカウントを作成することなくゲームに参加することができるので、小学校から高校まで幅広い校種で使用されています。

Kahoot!のゲーム画面。児童生徒は4つの選択肢から解答を選ぶ

授業でKahoot!を使用する際、教師は4択でクイズの問題を用意する必要があります。4択ということは正解の選択肢以外にも、誤答の選択肢を3つも作る必要があり、この準備を少し手間に感じていました。

しかしChatGPTを活用すれば、Kahoot!の問題作成も効率化することができます。私は次のプロンプトを使用して、効率化しています。

【Kahoot!の問題作成プロンプト】

# 命令書:
あなたは優秀な英語教師です。 次の制約条件をもとに、入力文の語彙の確認テストを作成してください。
# 制約条件:
・4択で作成すること
・Questionは英語で単語や句を1つずつ入れる
・決して文全体を入れないこと
・時制により動詞の形が変化している場合は、原形に戻すこと
・固有名詞以外、文頭は小文字にすること
・Answer1-4は日本語
・Time limitはすべて「60」
・Correct answerには正しい選択肢の番号のみを入れる
# 出力: |Question|Answer 1|Answer 2|Answer 3|Answer 4|Time limit|Correct answer|
# 入力文:
[ここに教科書の本文などを入れる]

 

 

このプロンプトのポイントは「#出力:」で出力の形式を指定しているところです。また、「|Question|Answer|…」と書くことで、ChatGPTは以下のように表の形で出力してくれます。

Kahoot!の問題作成プロンプトの出力例

このとおり、プロンプトとともに基となる文章を送るだけで、正解と誤答を混ぜて問題を作ってくれるのが、さすがChatGPTです。もちろん、問題としてイマイチなものも出力されるので、よいものだけを選ぶという使い方がおすすめです。

さらにKahoot!には、テンプレート(Excelファイル)から問題を作成する機能があります。上のプロンプトで作成した表は、このテンプレートに準拠しているので、出力結果を貼り付けるだけで、すぐにKahoot!の問題として取り込むことができます。

これまで問題を作る時間がなくKahoot!の活用を諦めていた先生も、ChatGPTを使えば問題作成にかかる時間はかなり短縮されるので、一度試してみる価値はあると思います。私自身、ChatGPTがなければ準備の負担感からあまり活用できていなかったと思うので、本当に助かっています。

AIができることはAIに任せよう

このように、教育現場でChatGPTを活用することで、かなり仕事を効率化することができ、これまで「できなかったこと」もできるようになりつつあります。

一方で、現状の生成AIには、課題点も少なからずあります。まずは教師が生成AIを使ってみて、それらの課題点について理解することが大切です。そのうえで、自身の仕事や生徒への指導に役立てるとよいでしょう。

教師の仕事は本当に多岐にわたります。すべての教師の仕事がAIに取って代わられるということはありえないですが、AIに任せて効率化すべき仕事もたくさんあるように感じます。AIができることはAIに任せて、人間にしかできないことに時間を使いたいですね。

南部久貴(なんぶ・ひさき)
滋賀県立高校教諭
2018年より、滋賀県で英語科教諭として勤務。ICTを活用した教育に関心があり、2022年度には、滋賀県のICTコアティーチャーを務めた。最近では、ChatGPTを活用した教育に関して、単行本や雑誌記事の執筆などを行っている。著書に『ChatGPT×教師の仕事』(明治図書出版)がある
※本記事の内容は、あくまでも個人としての見解です

(画像と動画:南部氏提供)