中央教育審議会(中教審)の特別部会で8月28日に取りまとめられた教員の働き方をめぐる緊急提言を受け、文部科学省は9月8日、教育委員会や学校で必要な方策などを整理し、取り組みを進めるよう各自治体と教育委員会の長に通知した。

中教審「教員を取り巻く環境は国の未来を左右しかねない危機的状況」

中教審の特別部会では、教員の長時間労働や残業代が支払われないことなど、教員の労働環境をめぐる諸問題について議論している。8月28日の緊急提言では、「教員を取り巻く環境は国の未来を左右しかねない危機的な状況にある」として法改正の必要がなくとも直ちにできることを取りまとめた。

緊急提言では、「登下校対応」「校内清掃」「休み時間の対応」など14の業務について、教員以外への分担や負担軽減を進め、年間の授業時数が国の標準を大幅に上回る1086コマ以上の学校は来年度から見直すこと、学校行事は厳選し、準備負担も減らすよう求めている。

このほかの対応策として、授業や事務作業をサポートする「教員業務支援員」を全小中学校に配置したり、教員の負担を減らす小学校高学年での「教科担任制」実施を前倒したり、いわゆる「モンスターペアレント」対応に教育委員会が当たったりすることなどを挙げている。

負担軽減のため徹底して取り組むべき事項を3テーマで提示

文科省は今回の通知で、緊急提言の内容を踏まえ、都道府県、市町村、各学校などが徹底して取り組むべき事項を①学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進について、②学校における働き方改革の実効性の向上等、③持続可能な勤務環境整備等の支援の充実、と大きく3つのテーマに分けてまとめた。

①では学校給食費の徴収・管理などの事務は、学校や教職員ではなく地方公共団体の事務とすることを基本としたうえで公会計化を進めることを要請。また、児童生徒が警察に補導されたとき、警察には一義的な責任は保護者にあるとして対応するよう依頼していることを改めて伝えたうえで、教育委員会や学校は警察と連携した非行防止対策に取り組んでほしいとした。

このほか、授業時間数や学校行事のあり方の見直しに当たっては、「災害や流行性疾患による学級閉鎖などの不測の事態に備えることのみを過剰に意識して標準授業時数を大幅に上回って教育課程を編成する必要はない」「学校としての体裁を保つためのものや前例のみにとらわれて慣例的に行っている部分をやめる」などと踏み込んで言及した。

②では、教員の健康と福祉の確保を徹底するべく、在校時間が上限時間を超えている場合は服務監督教育委員会が学校業務を検証、見直すように求めた。このほか、勤務時間の途中で休憩時間を確保すること、教員の精神疾患予防や早期発見、復職に向けた支援やフォローアップといったメンタルヘルス対策を講じることとしている。

③では、教職員定数や支援スタッフの配置、処遇やなり手確保などを改善するべく、2024(令和6)年度概算要求で必要な経費を盛り込んでいるとして、取り組み徹底を求めた。

調査元:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/099/mext_01561.html

(注記のない写真: m1kara / PIXTA)